大津市歴史博物館

博物館の活動報告

「大津市歴史博物館の基本的運営方針」について

■策定の経過

 大津市歴史博物館は平成2年の開館以来、さまざまな事業に取り組んできましたが、この間、博物館をとりまく社会状況の変化のなか、あらためて博物館の存在意義が問われています。そういった状況のもと、平成23年12月20日付けで、文部科学省より「博物館の設置及び運営上の望ましい基準」が告示され、そのなかで博物館の設置目的を踏まえた基本的運営方針や年度ごとの事業計画の策定に努めることなどが提示されました。 これをうけて、大津市歴史博物館では平成26年度から、「基本的運営方針」の原案作成に着手、附属機関である大津市歴史博物館協議会による2年間に渡る討議を経た答申をもとに、パブリックコメント、大津市教育委員会における議決を経て、このたび「大津市歴史博物館の基本的運営方針」として公表するものです。 なお、この基本的運営方針については、「大津市教育振興基本計画」の策定年度である平成32年度から5年ごとを目途に、必要に応じて見直すこととしています。

■大津市歴史博物館の基本的運営方針(平成29年3月23日策定)

1、大津市歴史博物館が目指すもの

・豊かな歴史と文化をともに学び、ともに未来へ引き継ぐ

 歴史博物館は、大津市の豊かな歴史と文化の素晴らしさを、そこに暮らす人々とともに学ぶことによって、郷土への愛着と誇りを育むとともに、多様でかつ地域性豊かな郷土の魅力を発信し、その担い手を育て、さらに未来へと引き継いでいきます。そして、人と人、人とモノとの出会いによって生みだされる学びの楽しさを、子どもたちをはじめとする、幅広い世代の人々とともに分かち合える場となるような博物館を目指します。それとともに、誰もが暮らしてよかった、訪れてよかったと思えるような大津市のまちづくりにも寄与することを、歴史博物館の使命とします。

2、大津市の歴史と文化の魅力とは

(1) 琵琶湖と緑の山々の豊かな自然の恵みによって育まれた歴史と文化

 大津市は、魅力にあふれた都市です。日本一広い琵琶湖が、目の前に広がっています。背後は、緑の山々に囲まれています。その豊かな自然の恵みにより、先人たちは、大津市ならではの歴史と文化を育んできました。大津京、渡来文化を示す遺跡、仏教文化の聖地、水陸交通の要所、大津絵と近江八景、明治以降の近代化など。その魅力は多様で、またこれからも、さらなる調査によって、新たな魅力が発見されていくことでしょう。

(2) 個性あふれる地域によって生み出された多様な歴史と文化

 大津市は、明治31年(1898)の市制施行以来、度重なる合併により、市域が南北に細長いという地理的な特徴を持っています。山村部、湖辺や農村、また門前町・宿場町・港町・城下町といった都市部など、それらの多様な特徴を持つ地域に暮らす人々の営みによって、大津市には、個性豊かな歴史と文化が育まれてきました。

(3) 数多くの国宝・重要文化財が残される一方、未指定の埋もれた文化財が人知れず眠る、未知の可能性を秘めた歴史と文化

 世界遺産を擁する大津市には、国宝・重要文化財といった国指定文化財が、京都市・奈良市に次いで3番目と、数多く残されています。また、未指定で、地域の人々によって守られてきた文化財も豊富です。それでもまだ、人知れず埋もれている文化財が、多く眠っています。大津市の歴史と文化は、未知の可能性を秘めた魅力にあふれています。

(4) 日本の各地域へ、さらに世界へと広がる歴史と文化

 歴史をさかのぼると、中国大陸や朝鮮半島からの渡来文化、インドで発祥し、シルクロードを通じて我が国に伝えられた仏教、延暦寺・園城寺・西教寺・石山寺や日吉大社など日本の神仏信仰の中心的な位置にある多くの社寺、さらに、東西交通の要所といえる琵琶湖水運や東海道、北国海道、峠越えの道などの陸上交通。大津市の歴史と文化は、全国、さらに世界へと、無限の広がりを持っています。

3、基本的運営方針・活動目標

基本的運営方針1
地域に埋もれた歴史と文化をともに調べ、ともに守る

 大津市の歴史と文化の魅力でも触れたように、国指定文化財の豊かさとともに、市内の各地域には、地域性を持つ未指定の文化財が人知れず眠っています。また、日本の各地に、歴史的なつながりを示す文化財も数多く残されています。それらの文化財を守ってこられた地域の人々とともに調査し、その保存、活用について考えます。

◇活動目標(1) 資料の調査収集・研究活動の推進

 市内、市外を問わず、本市の歴史と文化の特徴に関わる資料を積極的に調査収集し研究する。調査に際しては、資料所蔵者(個人・団体を含む)への取材により、資料の伝来状況を記録し、資料の持つ歴史的意義について明らかにする。

【具体的事業案】

1.継続的な資料調査の実施 調査対象資料は、絵画・彫刻・工芸・歴史・古文書・民俗・考古の各分野とする。また、分野を超えた複合的な調査・収集を、適宜実施することにより、資料に対する新たな価値を見い出す。

2.他機関等専門家との合同による資料調査 文化庁、関係研究機関(大学・博物館など)との合同調査を積極的に実施し、資料の歴史的な意義を明らかにする。

3.資料調査成果の発表と共有化 資料調査の成果を『大津市歴史博物館研究紀要』等の学術雑誌や研究会において発表することにより、大津市の豊かな歴史と文化の共有化を図る。

◇活動目標(2) 調査によって得られた情報のデータ化と収蔵資料の充実

 調査収集した資料の整理と目録化を行うとともに、当館で導入している「歴史博物館収蔵品データベース」に蓄積し、今後の活用可能な基礎データとする。

【具体的事業案】

1.調査資料の詳細なデータ化 調査資料の整理にあたっては、調査で得られたあらゆる情報(聞き取り調査も含め)を「収蔵品データベース」等に蓄積し、資料がもつ情報を含めて次代に引き継ぐ。

2.収蔵資料の充実 購入・受贈・受託などの方法による博物館収蔵資料の充実につとめ、展示、レファレンス等への活用を図る。

3.収蔵資料保存に向けた施設の充実 定期的な資料の燻蒸により、保存環境を良好に保つとともに、空調機器など設備の維持管理、改修につとめる。また、資料の収蔵スペースの確保についても検討する。

◇活動目標(3) 地域資料の保存、活用に向けた情報の共有化と学習支援の推進

 資料調査の成果を所蔵者に還元し、資料保存に関する情報の共有化を進める。また資料をもとにした地域学習の要望に対して博物館も積極的に参加し、その活用方法などについて、ともに考える。

【具体的事業案】

1.資料保存についての情報の共有化 博物館と地域で資料の保存環境に関する情報を共有化し、資料の劣化や散逸を防ぐ。

2.資料を活用した共同学習の推進 資料を素材とした地域学習の要望に対し、博物館も積極的に参加し、その活用方法について、ともに考え、資料に盛り込まれた地域の特性についての共同学習を進める。

基本的運営方針2
あらゆる世代、あらゆる地域に対し、歴史情報の共有化に向けた情報発信を行う

 調査によって収集した、大津市の歴史と文化の魅力を、未来を担う子どもや若者をはじめとするあらゆる世代、市内外を含めたあらゆる地域の人々に伝え、そして歴史と文化の新たな担い手を育てるために、その共有化に向けた情報を発信していきます。また発信にあたっては、幅広いテーマによる企画展示の開催、歴史博物館や地域での体験も含めた講座の開催、蓄積したデータのインターネット等を通じた積極的な公開などを、親しみやすさに焦点を当てながら実施していきます。

◇活動目標(1) 常設展示の充実

 資料の調査、研究によって得られた新たな情報を常設展示によって紹介し、常に新鮮な情報を発信する。また、利用者のニーズを把握し、展示内容に反映させるとともに、将来の改修に向けた準備を行う。

【具体的事業案】

1.ミニ企画展・特別公開などの充実 大津絵・近江八景など、大津市ならではの歴史と文化の魅力を示す資料を、ミニ企画展において定期的に公開していくとともに、資料調査によって得られた新発見資料のタイムリーな公開につとめる。

2.展示解説シートの作成と活用 常設展示の内容や大津の歴史に関する理解をより深めるための解説シートを作成するとともに、事前学習にも利用できるように、ホームページ等で公開し、利用の促進を図る。また海外からの観光客誘致に向けて、多言語版解説シートを作成する。

3.展示解説の充実 現在運用中の音声ガイドの内容充実に加え、観覧者の展示内容に対する理解を深める様々な解説方法を模索する。

4.常設展示の見直し 観覧者アンケート等により、満足度・リピーター率等を把握するほか、意見の集約により、展示内容の充実を図るとともに、今後の展示改装に向けた基礎資料として活用する。

◇活動目標(2) 企画展示の充実

 企画展示のテーマとして、国指定などを始めとする一級の文化財の鑑賞機会を提供するとともに、個性あふれる地域の魅力に焦点を当てた企画展、タイムリーなテーマによる企画展を開催し、大津市の歴史と文化の素晴らしさを広く発信する。

【具体的事業案】

1.指定文化財の公開 日頃、目にすることの少ない指定文化財(国・県・市指定)の鑑賞機会を来館者に提供する。

2.資料調査の成果を盛り込んだ企画展の開催 大津市の歴史と文化の特徴として挙げた、個性あふれる地域の魅力等を重視したテーマによる企画展を開催する。

3.企画展示開催方法の検討 企画展開催にあたっては、展示内容への理解を深めるため、れきはく講座と連動させるなど、多様な試みを模索する。また他の博物館や文化施設等と連携し、幅広い視点で地域の魅力を明らかにする。

4.親しみやすい企画展 利用者のニーズに応じたテーマでの企画を検討する。また、解説などについても分かりやすさ、親しみやすさを念頭においた工夫と見直しを常に行う。

◇活動目標(3) 子ども・若者に対する学習支援の推進

 子ども・若者を、大津市の歴史と文化の魅力を未来へ引き継ぐ担い手として育てていくため、各年代層に応じた、学習に関する支援を積極的に進めていく。

【具体的事業案】

1.小中学生来館に対する学習支援 学校団体観覧をはじめ、来館する児童・生徒に向けた、常設展示解説シート、ワークシートを新たに作成し、歴史と文化の普及を図るとともに、受入れの促進を図る。

2.小中学校への出張授業 主に、小学校3年生の学習分野「昔の道具、昔の暮らしを学ぶ」、6年生の社会科歴史分野に対応した出張授業を実施するとともに、学校現場での授業支援に向けた副教材を作成する。

3.親子で学ぶ歴史講座の開催 大津市全体や地域の歴史、また博物館資料や施設及び活動に関する講座を、体験型に力点を置きながら実施する。

4.子ども・若者に対する多様な学習支援 子ども・若者に対し、館内や地域での資料調査など、学芸員の仕事を実体験してもらうとともに、自発的な郷土学習に対する支援を行うことで、文化財の保存や伝承に対する意識の普及を図る。

◇活動目標(4) 幅広い世代に向けた積極的な情報発信

 博物館が持っている資料や情報を、れきはく講座やホームページ等を通じて積極的に 発信することにより、市民等の生涯学習に対するニーズに応える。

【具体的事業案】

1.れきはく講座の開催 現在、毎週土曜日を基本として開催している、博物館講堂での講座と年4回程度の現地見学会を、今後も継続実施するとともに、参加者のニーズを把握し、講座内容の充実を図る。

2.公民館講座等への講師派遣 地域の公民館、市民の歴史サークル、各種団体などで開催される講座に講師を派遣し、大津市の歴史と文化の普及を図る。

3.れきはくホームページの充実 博物館の案内や展示の紹介以外に、大津の歴史と文化を示す資料のデータを高精細画像によって提供し、歴史博物館を訪れることなく、自宅でも、より詳細な資料の検索を可能とする。

4.報道機関への情報提供 企画展、ミニ企画展を始め、調査による新発見資料等を随時記者発表し、博物館活動の内容を幅広く広報する。

基本的運営方針3
大津市の歴史と文化の普及に携わるさまざまな組織の活動と連携し、支援体制を築き、歴史情報のセンターとしての役割を担う

 調査によって収集した、大津市の歴史と文化の魅力を、未来を担う子どもや若者をはじめとするあらゆる世代、市内外を含めたあらゆる地域の人々に伝え、そして歴史と文化の新たな担い手を育てるために、その共有化に向けた情報を発信していきます。また発信にあたっては、幅広いテーマによる企画展示の開催、歴史博物館や地域での体験も含めた講座の開催、蓄積したデータのインターネット等を通じた積極的な公開などを、親しみやすさに焦点を当てながら実施していきます。

◇活動目標(1) 大津市各部局および市内大学、各種団体、文化施設等との連携

 大津市の各部局および市内大学、各種団体、文化施設等との連携を図りながら、本市の歴史情報発信の核としての役割を果たす。

【具体的事業案】

1.大津市教育委員会、市長部局各課との連携 文化財保護課、生涯学習課、市立図書館、都市計画や観光等の諸計画と連携を図り、本市行政における大津の歴史と文化推進事業の核としての役割を果たす。

2.市内大学、文化施設等との連携 平成14年度から開催している成安造形大学との連携による「夏休み子どもワークショップ」をはじめ、市内大学、文化施設等との様々な連携により、大津の歴史と文化の魅力を、市民等と共有する取り組みを行う。

◇活動目標(2) 歴史と文化情報のセンターとしての役割を担う

 歴史博物館で調査収集した資料を幅広く提供するとともに、博物館展示室を広くギャラリーとして活用に供するなど、歴史と文化の普及に関するセンターとしての役割を担う。

【具体的事業案】

1.他の博物館等展覧会に係る収蔵資料の貸し出し 他の博物館、各種団体等が開催する展覧会に対し、博物館所蔵資料等の貸し出しを行うことで、本市の歴史と文化普及の核としての役割を果たす。

2.博物館資料の幅広い活用 博物館所蔵資料等を、地域の文化活動や福祉活動、書籍の出版や個人の調査、研究などに幅広く提供し、その活用を推進する。

3.レファレンス対応 市民や報道機関などから、メール、電話、手紙、来館などによる問い合わせへの対応。

4.企画展示室の活用 企画展示室を大津市美術展や教育委員会主催事業の会場として提供するほか、広く市民ギャラリーとしても貸し出し、文化的活動への活用を図る。