大津市歴史博物館

お知らせ

企画展
南北朝内乱と大津
平成14年2月26日(火)〜3月24日(日)

概要

南北朝時代(一三三一〜九二)は、南朝(吉野)と北朝(京都)の二つの朝廷が並立して政権を争った、内乱の時代でした。

後醍醐天皇は、天皇親政をめざして鎌倉幕府を倒し、建武新政を進めました。しかし、その政策に反発した足利尊氏が、北朝の天皇を奉じて室町幕府を開き、各地の武士たちは南北両朝に分かれて、全国的な戦乱となったのでした。 戦いは、主として京都の争奪をめぐって展開され、隣接する大津はながくその戦場となりました。延暦寺(後醍醐天皇方)と園城寺(足利尊氏方)という経済・軍事力を備えた大寺院が、両朝の軍事拠点の一つとなったからです。

本展は、この内乱を描いた軍記物語『太平記』や大津・近江の寺社に残る古文書等、国宝一件・重要文化財三件を含む約四〇点の資料により、内乱期の大津・近江の歴史を明らかにしようとするものです。

主な展示資料を紹介しますと、まず『太平記』は、今川義元の父・氏親の所蔵本を武田信玄の父・信懸が書写させたという「今川家本」。永正二年(一五〇五)書写で、現存最古の写本です。また、「陸波羅南北過去帳」は、鎌倉幕府のもとで京都を支配していた六波羅探題の北条仲時ら四三〇余人が、足利尊氏軍に追われて近江国番場(米原町)で自刃した悲劇、鎌倉幕府滅亡の歴史のひとこまを生々しく伝える資料です。 このほか、源氏ゆかりの寺院として足利氏が崇拝した園城寺には、足利氏が事あるごとに軍事的要衝「勢多橋」の警固を命じた古文書や、足利尊氏発願の「大蔵経」などが伝来しており、これらにより足利将軍家の人々の足跡をたどります。ことに「大蔵経」は、政権確立のためには弟直義をも討伐した冷徹な武将尊氏が、反面に厚い信仰心をいだいていたことを示すものであり、内乱期を生きた武人の複雑な内面を示すものといえましょう。また、将軍家側近の実力者で、古い権威を否定した自由奔放な行動で知られた近江の武将・佐々木道誉の事績を、その画像や、多賀大社等に残る書状などで紹介。さらに、市内今堅田に墓が残る勾当内侍と後醍醐天皇方の武将新田義貞との別離と死のエピソードも紹介し、内乱期の歴史の歩みだけでなくその時代に生きた人々の生き方や心情をもさぐる展示としたいと考えています。

 


おもな展示作品

重要文化財 大蔵経(足利尊氏願経)の内自筆写経(文和3年=1354、園城寺蔵)
国宝 「東寺百合文書」の内、足利尊氏御判御教書 (文和2年=1353、京都府立総合資料館蔵)
足利義詮御判御教書(文和2年=1353、園城寺蔵)
重要文化財 陸波羅南北過去帳(南北朝時代、蓮華寺蔵)
重要文化財 佐々木道誉像(南北朝時代、勝楽寺蔵)
国宝 「東寺百合文書」の内・真言院後七日請僧交名裏書 (建武3年=1336、京都府立総合資料館蔵)
太平記(今川家本)巻20の内「勾当内侍事」(永正2年=1505、陽明文庫蔵)
県指定 「多賀大社文書」の内・佐々木道誉書状(建武4年=1337、多賀大社蔵)

関連の催し物

展覧会をより深くご理解いただくため、期間中さまざまな講座を開催いたします。

ミニ企画展関連講座
「園城寺の尊氏願経について」 講師:中森 洋(本館学芸員)
3月2日(土)13:30〜


ミニ企画展関連講座
「『太平記』を読むために−その構造・その言葉−」 講師:笹川祥生(京都女子大学教授)
3月16日(土)13:30〜

企画展インフォメーション

常設展示のチケットでご観覧いただけます。

観覧料 一般 400円(320円) 高大生300円(240円) 小中生200円(160円)
※( )内は団体・前売料金。市内在住の65歳以上の方・障害者の方は無料
期間中の休館日 休館日 月曜日、3/22(金)