大津市歴史博物館

お知らせ

第89回ミニ企画展
大津の仏教文化11 三井寺の仏画
平成23年 3月8日(火)〜4月24日(日)

概要

 天台寺門宗総本山の園城寺(三井寺)は、大津に都があった七世紀中頃には創建されたと考えられている、大津の現存する最古の寺院の一つです。後の平安時代(九世紀)に、比叡山延暦寺の第五代天台座主、円珍(智証大師)が入寺したことにより天台別院になりました。さらに十世紀末には延暦寺が分裂し、円珍派(後に寺門派)が円珍像やゆかりの宝物などとともに山を降りて、ここを本拠としました。朝廷の帰依が篤く、わが国有数の権門寺院として隆盛を誇っていたこともあり、当時一流の宝物が造られました。現在でも国宝や重要文化財をはじめとした大変多くの寺宝を所蔵することでよく知られています。この秋の「大津 国宝への旅」で展示した国宝の黄不動尊や、同じく国宝の五部心観などの素晴らしい秘宝は、ご記憶に新しいことかと思います。
 今回は、今までほとんど紹介されることの無かった、未指定の中世仏画を中心に展示します。円珍像や新羅明神といった本寺独特のものから、両界曼荼羅などの天台密教に関するもの、さらには、近年の修復まで使用されていた国宝黄不動尊の旧表具など、普段は全く目に触れることのできない貴重な宝物も展示予定です。本展により、三井寺の懐の深さを感じていただけましたら幸いです。


おもな展示作品

1.国宝絹本著色黄不動尊・旧表具 一括 江戸時代
3.絹本著色不動明王二童子像 1幅 室町時代

1.国宝絹本著色黄不動尊・旧表具 一括 江戸時代
 国宝絹本著色不動明王像(黄不動尊・金色不動明王)は、単独で描かれた世界最古の不動明王として、さらには我が国屈指の仏画の至宝として著名で、三井寺僧でもめったに拝することのできない霊像です。平成10年(1998)に修復が行われ、元のものは別保管されました。それが今回展示のもので、表具裏と旧軸木の墨書によれば、寛永20年(1643)の表具と分かります。

3.絹本著色不動明王二童子像 1幅 室町時代
 天台密教の本拠地でもある三井寺には、多くの不動明王像が伝来しています。おそらく現在三井寺山内に安置されている仏像の中では、不動明王が最も数多く残っています。典型的な高雄曼荼羅様の不動ですが、二童子にもそれぞれに二重の瑟々坐を表すところや、台座の下を石畳風に描くのは非常に珍しい表現です。


4.絹本著色両界曼荼羅図 2幅のうち「胎蔵界」

4.絹本著色両界曼荼羅図 2幅のうち「胎蔵界」 室町時代
 三井寺には、中世にさかのぼる両界曼荼羅が3具伝来しています。この絵は通例の現図系の両界曼荼羅ですが、保存が極めて良く、各尊像や図柄が明確に判断できるのは貴重です。毎年10月29日に唐院大師堂で行われる、智証大師円珍の御祥忌会に現在も現役で使用されています。


5.絹本著色両界曼荼羅図 2幅のうち「胎蔵界」 南北朝時代

5.絹本著色両界曼荼羅図 2幅のうち「胎蔵界」 南北朝時代
 小幅の現図系両界曼荼羅で、やや剥落が目立ちますが精緻に描かれ、南北朝時代の制作と思われます。初出陳。


8.絹本著色新羅明神像 1幅 室町時代
9.紙本著色新羅明神像 1幅 室町時代

8.絹本著色新羅明神像 1幅 室町時代
 三井寺北院に鎮座する新羅明神(しんらみょうじん)は、入唐した智証大師円珍を守護し、帰朝後に三井寺の鎮守神となった異国の神様です。この絵は、法明院に伝来した像で、姿は通例ながら、老荘な雰囲気は迫力があります。通常派手な装いの多い新羅明神ですが、本像の落ち着いた色味は珍しいものです。

9.紙本著色新羅明神像 1幅 室町時代
 基本的な図像は今までのものをほぼ踏襲していますが、頭体を細身ではなく肥満に表しています。また、墨書による書き込みがあり、本画は下絵であることがわかります。このように中世仏画の下絵が残っているのも珍しいことです。


19.木版墨摺り慈恵大師像(乱れ版) 1幅 江戸時代

19.木版墨摺り慈恵大師像(乱れ版) 1幅 江戸時代
 10世紀に活躍した、第18代天台座主の良源(慈恵大師、元三大師)は、比叡山延暦寺を権門寺院として興隆させた人物として有名です。本像はわざとどろどろに表す「乱れ版」で、何を描いているか一見わかりませんが、良源のトレードマークの長い眉毛があることから、良源像と分かるのです。


期間中の展示替えについて

 展覧会期間中、作品の展示替えを行ないます。以下の展示作品一覧に、展示替え予定を掲載しておりますのでご確認ください。なお、所蔵者のご都合等により、急遽展示替えを行なう場合がございますので、あわせてご了承ください。 

【展示作品一覧(展示替え情報含む)がダウンロードできます。】

  ミニ企画展「大津の仏教文化11 三井寺の仏画」展示品一覧.pdf 【PDFファイル、94KB】

企画展インフォメーション

タイトル 第89回ミニ企画展 大津の仏教文化11 三井寺の仏画
会期 平成23年 3月8日(火)〜4月24日(日)
期間中の休館日 月曜日(3月21日は開館)、3月22日
会場 大津市歴史博物館 常設展示室内 ミニ企画展コーナー
観覧料 常設展示観覧料でご覧いただけます。
一般210円(160円)  高校・大学生150円(120円)  小中学生 100円(80円)
※( )内は、15名様以上の団体料金。大津市内在住の65歳以上の方、大津市内在住の障害者の方は無料(証明するものをご提示ください)。
※土曜日は、すべての小中学生の方は無料です。