大津市歴史博物館

お知らせ

第47回企画展
かわら−瓦からみた大津史−
平成20年 10月11日(土)〜11月24日(月・休)

概要

 大津の市街地も、全国の都市と同様、ビルが建ち並び、一般の民家でも瓦屋根の住宅が段々少なくなってきました。このままでは日本住宅から瓦が消えてしまう日が来るかもしれません。ましてや、葺きかえられた古い瓦は「瓦礫」となる運命です。しかし、それら「瓦礫の山」は、日本の歴史を物語る「宝の山」でもあるのです。
 さて日本に瓦が伝わったのは、今からおよそ1400年前の飛鳥時代。大津にも、その頃につくられた瓦が、穴太廃寺から出土しています。以来、大津も古代寺院の造営とともに、さまざまな意匠の瓦が製作されました。江戸時代初期には、松本村(大津市松本)が瓦の一大生産地として登場。またこの時代、一人の瓦師が瓦界に革命を起こします。その名は西村半兵衛。発明された瓦は「桟瓦」。古くは、丸瓦と平瓦を組み合わせた「本瓦葺」が瓦屋根の主流でしたが、半兵衛による桟瓦の発明により、庶民の住宅に、軽量で安価な桟瓦が普及したのです。
 本展では、飛鳥・白鳳期から奈良・平安時代にかけて生み出された古代瓦を始め、江戸時代の松本村瓦師や西村半兵衛の銘を持つユニークな鬼瓦、猿や虎、猪などのかわいい動物をあしらった瓦、さまざまな屋根の姿を描いた屏風や絵図面などを展示。皆さんを奧深い「瓦の世界」に御案内します。


おもな展示作品から

大津で一番古い瓦
滋賀県教育委員会蔵
ニックネームはさそり瓦
大津市指定文化財 近江神宮蔵

大棟を飾る予定だった鴟尾
大津市指定文化財 大津市蔵

 桟瓦の発明者西村半兵衛の鬼瓦
尊勝庵蔵
あっかんべえと舌を出す鬼瓦
真光寺蔵
多方面に睨みをきかせる三面鬼
観念寺蔵

 うーさぎ兎、何見て跳ねる
真迎寺蔵
お猿さんは栗が大好物
桃源寺蔵
郵便マークの瓦も珍しくなった
仰木郵便局蔵



瓦からみた大津史

 わが国における瓦の使用は、今から約1400年前、崇峻元年(588)の飛鳥寺創建に伴い、百済から4名の「瓦博士」が来日したことに始まります。大津でもこの飛鳥時代の瓦が、前期穴太廃寺から出土しています。これが大津での瓦使用の最初であり、以後、白鳳時代には、衣川廃寺・後期穴太廃寺・崇福寺・南滋賀廃寺・園城寺前身寺院など多くの寺院が建立され、また瓦を焼成する瓦窯が構築されるようになりました。
 奈良時代には、瀬田の地に近江国の地方行政を総括する国府が設置され、周辺にも官衙や寺院が建てられたことで、多量の瓦が使用されるようになります。また、時の最高権力者藤原仲麻呂の主導により造営された保良宮では、平城京と酷似した瓦が使用されています。さらに平安時代になると、瓦の需要はますます増え、それらの瓦の中に、大津と平安京との関係をうかがわせる京都産の瓦が認められます。
 戦国時代には、坂本城と大津城が建てられますが、特に大津城の天主(天守)は、豊臣政権の権威の象徴として金箔瓦が葺かれていたと見られています。また関ヶ原合戦後に膳所城が築かれると、藩主本多家の家紋「立葵」をあしらった瓦も登場します。
 江戸時代初期には、大津の瓦師西村半兵衛が「桟瓦」を発明。瓦界に一大革命をもたらせました。この瓦は、現在一般の住宅で普通に見られるもので、従来の、丸瓦と平瓦を組み合わせた「本瓦葺」に比べ、軽量で安価なことが利点だったのです。これによって、一般住宅への瓦の普及の素地が、この桟瓦の発明によって出来たといっても過言ではないでしょう。また同じ江戸時代、松本村(大津市松本)が瓦の一大生産地として登場し、広範な地域に瓦が供給されるようになりました。活動の時期は江戸時代初期から明治時代と長く、「松本瓦」が大津の瓦の代名詞といった感さえありました。ただ幕末から明治にかけて、市内各地に新たな瓦師が続々登場し、周辺の瓦の需要を満たすことになります。この時期、瓦生産が、中心から周辺へと広がっていったのです。
明治になると、近代教育の象徴として各地に小学校が建設されることになります。今も学校名や「学」の文字を入れた鬼瓦が各地に残され、新しい時代の息吹を今に伝えてくれます。それは、まさに瓦にとっての近代の幕開けを意味していたのです。


関連の催し物

展覧会をより深くご理解いただくため、期間中さまざまな講座を開催いたします。詳しくは講座・講演会のページをご覧ください。


展示解説図録

「かわら−瓦からみた大津史−」図録
平成20年発行 A5判 128頁 800円 送料290円
 

 

 

企画展インフォメーション

主催 大津市・大津市教育委員会・大津市歴史博物館・京都新聞社
後援 BBCびわ湖放送・NHK大津放送局・エフエム滋賀
協力 滋賀県瓦工事協同組合
観覧料 一般600円(480円) 高大生500円(400円) 小中生200円(160円)
※( )内は、前売、15名様以上の団体。および、大津市内在住の
65歳以上の方、大津市内在住の障害者の方の割引料金
(証明するものをご提示ください)。
会場 大津市歴史博物館 企画展示室A
開館時間 午前9時から午後5時(入場は午後4時30分まで)
期間中の休館日 10月14日(火)、20日(月)、27日(月)、11月4日(火)、10日(月)、17日(月)
前売券 大津市内観光案内所(大津駅・石山駅・堅田駅前)、
大津市民会館、ローソンチケットをはじめ、京阪津地区の
おもなプレイガイドで販売