大津市歴史博物館は、購入・受贈・受託など合わせて1,000件近い資料を収蔵していますが、このたび「鴟尾(しび) 4個」〔大津市蔵〕が重要文化財に、「木造阿弥陀如来及び両脇侍(りょうきょうじ)像 3躯」〔西教寺蔵〕が滋賀県指定有形文化財に、それぞれ指定されることになりました。
これを記念して、大津市歴史博物館の常設展示室において、下記の日程で特別公開を実施します。
一里山三丁目にある山ノ神遺跡(やまのかみいせき)の窯跡の発掘調査で、7世紀後半に、焼くのに失敗し、そのまま放置された鴟尾4個が見つかりました。
鴟尾とは、宮殿や寺院の屋根の両端に取り付けられた飾りで、建物を力強く立派に見せる役目があります。奈良県唐招提寺の鴟尾は、奈良時代のものが、つい最近まで屋根の上に乗っていて有名です。しかし、これは例外で、ほとんどの鴟尾は遺跡の発掘調査で見つかります。現在までに約300例ほどの鴟尾が見つかっていますが、たいてい破片で完全に復元できるものは、ほんのわずかです。山ノ神遺跡では、そのような状況の中で、完全に復元できる鴟尾が4個もみつかりました。
今回、復元された鴟尾は、形や大きさ・飾り方などが非常によく似ているところから、一つのお手本を基にして作られたようです。展示する鴟尾は、高さ140cm、基底部長さ104cm、基底部最大幅60cmで、重さは164.3kgあります。鴟尾の乗っている木製品は、窯にいれる際に使ったはしご状の台座で、鴟尾本体とあわせて復元しました。
この鴟尾がどこの寺院に飾られる予定であったのかは不明ですが、鴟尾の出土例として非常に貴重な資料であるところから、重要文化財に指定されました。
なお、今回展示するのは4個のうちの1個です。
勢至菩薩 | 阿弥陀如来 | 観音菩薩 |
観音像足ほぞ「巧匠法橋行快」 | 観音菩薩(側面) |
本像は、歴史博物館が平成23年6月に実施した寺宝調査において新発見されたもので、鎌倉初期の著名仏師である快慶の一番弟子として知られる、「巧匠 法橋行快(こうしょう ほっきょう ぎょうかい)」の墨書銘があります。大きさは、阿弥陀如来立像が81.0cm、観音菩薩立像が59.5cm、勢至菩薩立像が59.0cmを測ります。
特徴を見ると、涼やかで理知的な面相部や、やや左腰を引いて左足を前に出すという歩行表現は快慶一派の持つ作風と近似しています。さらにあくの強い(目が大きめできつめ)表情の多い他の行快像(法眼時代)と比べて、本像の目は細く、やさしい感じを受けます。これはどちらかというと快慶に近い相貌といえ、この時代は快慶の存命時期ですから、快慶に近い表情を造っていたのではないかと想像されます。また、本像は、彼が「法橋」であった1216〜27年の間の造像と考えられ、確かな「行快作」の仏像としては、今のところ現存最古級の像といえそうです。快慶一派の工房制作を考えるうえで全国的に見ても貴重な作例です。
会 期 | 5月21日(火)〜6月16日(日)。月曜日は休館 |
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展示場所 | 大津市歴史博物館 常設展示室2階 |
観 覧 料 | 常設展示観覧料が必要です くわしくはこちら |