大津市歴史博物館は、平成2年に開館してから、本年で20周年を迎えます。その間、多くの皆様方からご支援いただき、厚くお礼申し上げます。今秋、開館20周年を記念し、企画展「大津 国宝へ旅」を開催する運びとなりました。ご覧いただく作品は、実に、国宝35点、重要文化財55点を始めとする、大津ゆかりの名宝150点余。当館始まって以来、いまだかつてない規模になります。
大津市内に所在する国宝・重要文化財の件数は、京都、奈良に次いで多く、その内容は、両都市に決して負けてはいません(文化に勝ち負けとは恐縮ですが・・)!近年、新たに大津に転入された方々にも、もちろん以前から大津にお住まいの方々にも、「我が郷土」に誇りを持てるような、そして、その誇りを他都市に「自慢」できるような企画展にしたいとの一念で、頑張ってまいりました。さてさて、その成果や如何に!。皆さん、ご期待のほどを!!
今回は企画展示室AとBの二部屋使用、かなり見ごたえがあるはずです。その様子を少しのぞいてみましょう。
この部屋には、全国的に有名な最澄と円珍に関係する古文書や祖師像、絵巻や屏風、そして仏像が並びます。古文書はむずかしそうに見えますが、比叡山延暦寺を開いた最澄、園城寺(三井寺)中興の祖・円珍の人となりが想像できるようなものを厳選してご覧いただきます。なんと最澄の黒子(ほくろ)の数や場所が書かれた文書とか、なかなか味のある円珍の自筆の文書とか・・。特に2人が唐(中国)に留学しているときの文書からは、なみなみならぬ覚悟と苦労がしのばれるとともに、よくぞ今まで伝わったなあ!という奇跡に感動されると思います。書道を勉強中の方には、平安時代の「三蹟」の一人、小野道風(みちかぜ)の書も出ます。西教寺開祖の真盛上人の木像や遺品の数々も展示します。師の人柄を感じることが出来るでしょう。そして後期展示として、円珍の遺骨が納められているという国宝木造智証大師(御骨大師)像がお出ましです。
また、大津の絵巻物の白眉、石山寺縁起絵巻も、前期後期で4つ展示します。この絵巻には、逢坂関や瀬田唐橋など、市民の皆さんに馴染みの風景が見事な筆で描かれています。さすがに立派です。そして、桃山時代の屏風も前期・後期で四双並び、古文書とはまた違う世界を楽しんでいただけます。仏像は、園城寺の愛染明王像や盛安寺の十一面観音など、正当な平安彫刻をはじめとして、西岸寺や華開寺の阿弥陀如来像などの快慶一派の作例も展示します。
ここでは、前期展示が、園城寺の秘仏中の秘仏・黄不動尊を中心とした大津の不動明王の画像がずらり。五部心観も、唐から請来した本物(完本)と平安時代の模本(前欠本)を、並べて展示という、密教図像が好きな方にはたまらないものとなります。これにあわせて両界曼荼羅も5セット展示し、まさに密教の世界を体感していただけることでしょう。さらに部屋の中央には、智証大師像(中尊大師)が鎮座いたします。
後期展示はまったく内容が変わり、釈迦や阿弥陀如来などの顕教・浄土教の世界になります。なんといっても、ケース一面にずらっと並んだ六道絵に、必ずやみなさんは圧倒されるでしょう。聖衆来迎寺の本物の国宝六道絵を、虫干しの絵解きのときのように一面に見ることが出来るのは、ほんとに滅多にないことなので、見に来ていただく値打ちは充分あると思います。自信をもってお奨めします。そして実は、聖衆来迎寺の重要文化財仏画がほとんど展示され、旧蔵の釈迦三尊像(奈良国立博物館蔵)も里帰りします。ひそかに比叡山の正倉院とも呼ばれる聖衆来迎寺展でもあるのです。
これ以外にも、比叡山で最近発見された、世界的にも数が少ない高麗仏画の阿弥陀八大菩薩像や、安楽律院などの来迎図の数々も見ものです。何せ、150点の宝物が並びますので、説明もきりがありません。続きは現地でご確認ください。(樋爪・寺島)
※いずれも特別出品の秘宝のため、恐縮ですが展示替えをさせていただきます。詳しくは大津市歴史博物館までお問い合わせください。
【秘仏開扉】
■国宝 木造智証大師坐像(中尊大師) 平安時代 園城寺蔵 10/9〜10/24 ※御骨大師 11/2〜11/23 |
■国宝 絹本著色不動明王像(黄不動尊) 平安時代 ※写真は冷泉為恭の模写 園城寺蔵 10/9〜10/31 |
■国宝 紙本墨画五部心観(完本) 唐時代 園城寺蔵 10/9〜10/31(完本・前欠本とも) |
【六道の世界】≪後期≫11/2〜11/23
■国宝 絹本著色六道絵 鎌倉時代 聖衆来迎寺蔵 13幅がずらり!
閻魔庁図 |
等活地獄図 |
黒縄地獄図 |
天道歓楽図 |
第1章 【珠玉の古文書と大津ゆかりの祖師】 ■企画展示室A
■国宝 伝教大師入唐牒 平安時代 延暦寺蔵 10/9〜11/3 |
■国宝 伝教大師度縁案並僧綱牒 奈良時代 京都市・来迎院蔵 11/5〜11/23 |
■国宝 円珍贈法印大和尚位並智証大師諡号勅書 小野道風筆 東京国立博物館蔵 10/9〜11/3 |
重要文化財 智証大師伝 鎌倉時代 石山寺蔵 10/9〜11/3 |
木造慈摂大師(真盛上人)坐像 室町時代 西教寺蔵 10/9〜10/24・11/4〜11/23 |
第2章 【工芸と歴史資料】 ■企画展示室A
■国宝 金銅経箱 叡山横川如法堂埋納 平安時代 延暦寺蔵 11/16〜11/23 |
水晶五輪塔(舎利容器) 鎌倉時代 石山寺蔵 全期間展示 |
第3章 【絵画の魅力】 ■企画展示室A
重要文化財 紙本著色石山寺縁起絵巻 鎌倉時代 石山寺蔵 巻一・巻二前期 巻三・巻五後期 |
重要文化財 紙本著色近江名所図屏風 室町時代 滋賀県立近代美術館蔵 10/9〜11/3 |
大津市指定文化財 紙本著色柚子・柿二猿図屏風 桃山時代 西教寺蔵 11/5〜11/23 |
第4章 【み仏の祈り 仏像の美】 ■企画展示室A
大津市指定文化財 木造阿弥陀如来立像 平安時代 華開寺蔵 全期間展示 |
重要文化財 木造阿弥陀如来立像 鎌倉時代 西岸寺蔵 全期間展示 |
重要文化財 木造十一面観音立像 平安時代 盛安寺蔵 全期間展示 |
重要文化財 木造地蔵菩薩立像 鎌倉時代 真迎寺蔵 全期間展示 |
木造地蔵菩薩立像 平安時代 摂取院蔵 11/5〜11/23 |
木造菩薩立像 鎌倉時代 新光寺蔵 全期間展示 通 |
第5章 【曼荼羅】 《前期》10/9〜10/31 ■企画展示室B
絹本著色両界曼荼羅図(胎蔵界) 南北朝時代 大津市歴史博物館蔵 |
絹本著色両界曼荼羅図(金剛界) 南北朝時代 大津市歴史博物館蔵 |
絹本著色両界種子曼荼羅図(胎蔵界) 室町時代 延暦寺山内寺院蔵 |
絹本著色両界種子曼荼羅図(金剛界) 室町時代 延暦寺山内寺院蔵 |
■国宝 淳祐内供筆聖教(薫聖教) 悉曇字母 平安時代 石山寺蔵 |
第6章 【不動明王】 《前期》10/9〜10/31 ■企画展示室B
重要文化財 絹本著色不動明王二童子像 鎌倉時代 明王院蔵 |
絹本著色不動明王二童子像(海北友雪筆) 江戸時代 園城寺蔵 |
第7章 【顕教の美】 《後期》11/2〜11/23 ■企画展示室B
重要文化財 絹本著色阿弥陀二十五菩薩来迎図 鎌倉時代 安楽律院蔵 |
絹本著色阿弥陀八大菩薩図 高麗時代 滋賀院蔵 |
重要文化財 絹本著色楊柳観音図 高麗時代 聖衆来迎寺蔵 |
絹本著色千手観音像 鎌倉時代 求法寺蔵 |
重要文化財 絹本著色地蔵菩薩像 鎌倉時代 明徳院蔵 |
展覧会期間中、作品の展示替えを行ないます。以下の展示作品一覧に、展示替え予定を掲載しておりますのでご確認ください。なお、所蔵者のご都合等により、急遽展示替えを行なう場合がございますので、あわせてご了承ください。
【展示作品一覧(展示替え情報含む)がダウンロードできます。】
企画展「大津 国宝への旅」展示品一覧.pdf 【PDFファイル、110KB】 |
展覧会をより深くご理解いただくため、期間中さまざまな講座を開催いたします。詳しくは、講座・講演会情報をご覧下さい。
タイトル | 開館20周年記念企画展 大津 国宝への旅 |
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会期 | 平成22年 10月9日(土)〜11月23日(火・祝) |
主催 | 大津市・大津市教育委員会・大津市歴史博物館・京都新聞社・文化庁 |
共催 | 湖信会 |
協力 | 数珠巡礼会・びわ湖百八霊場会 |
後援 | NHK大津放送局・BBCびわ湖放送・エフエム京都 |
観覧料 | 一般1,000円(800円) 高大生500円(400円) 小中生 無料 ※( )内は、前売、15名様以上の団体。および、大津市内在住の 65歳以上の方、大津市内在住の障害者の方の割引料金 (証明するものをご提示ください)。 |
会場 | 大津市歴史博物館 企画展示室A・B |
期間中の休館日 | 月曜日(10月11日を除く)、10月12日、11月4日 | 前売券 | 前売券は、大津市観光案内所(大津駅・石山駅・堅田駅前)、大津市民会館、ローソンチケット(Lコード54773)をはじめ、京阪津地区の主なプレイガイドで9月1日から発売。 |