膳所藩は、本多氏が歴代の藩主をつとめたことで知られています。平成29年(2017)には、本多氏として最初の膳所藩主となった本多康俊が就任した元和3年(1617)から数えて400 年という節目の年を迎えたことから、今回それを記念し、膳所藩に焦点を当てた企画展を開催するものです。
膳所藩では、関ケ原の戦いの翌年、慶長6年(1601)から17 世紀の半ばまで、藩主は幾度も交代しています。最初は、戸田氏が2代(一西・氏鉄)、次いで、先に挙げた本多康俊から俊次へと続くのですが、その後、いったん菅沼氏、石川氏(2代、忠総・憲之=昌勝)に代わり、慶安4年(1651)本多俊次が再任されて以降、明治維新まで、本多氏が代々藩主を世襲することになったのです。
ただ、頻繁に交代した藩主が、徳川家ゆかりの譜代大名であったことは注目すべきでしょう。関ケ原の戦いに勝利したとはいえ、大坂冬の陣、夏の陣が終わるまで、豊臣家は命脈を保っており、豊臣家滅亡以後も、江戸に本拠を置く徳川政権にとって、畿内近国を東から抑える位置にあった膳所藩は、幕府にとって大切な意味を持っていたのです。俊次の代からは、禁裏(京都御所)の火の番や、交通の要衝であった瀬田橋の修築、管理などの役割を担い、その役割は幕末まで変わることなく続きます。また幕末動乱の渦中、膳所藩でも尊王攘夷運動が盛んとなり、十一烈士の処刑という悲劇的な事件を経験し、明治3年(1870)の膳所廃城、翌4年の廃藩置県を迎えるなかで、約270 年の歴史を閉じることになったのです。
本展では、膳所城と城下の様子、合戦における家臣の陣立てなどを描いた屏風絵、藩校・遵義堂や膳所焼に代表される教育と文化、近江や河内国内の藩領の様子、そして幕末の十一烈士事件(「学芸員のノートから」参照)などを、絵画、歴史、古文書、工芸などの資料によって紹介します。 なお、本展の開催にあたっては、昭和45年(1970)の開館以降、膳所藩資料の展示と普及に努めてこられた膳所藩資料館(大津市御殿浜)の全面的なご協力により、同館所蔵の資料も数多く展示させていただく予定です。ご期待ください。
タイトル | 企画展「膳所城と藩政 -築城から幕末十一烈士事件まで-」 |
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会期 | 平成30年 3月3日(土)〜4月15日(日) |
開館時間 | 9時〜17時(展示室への入場は16時30分まで) |
休館日 | 毎週月曜日、3月22日(木) |
会場 | 大津市歴史博物館 企画展示室A |
主催 | 大津市、大津市教育委員会、大津市歴史博物館、京都新聞 |
協力 | 膳所藩資料館 |
後援 | NHK大津放送局・BBCびわ湖放送・エフエム滋賀 |
観覧料 | 一般:600円(480円) 高校生・大学生300円(240円) 小学生・中学生200円(160円) ※( )内は、前売り、15名以上の団体割引、または大津市内在住の65歳以上の方、市内在住の障がい者の方、市内在住の介護保険の要介護者・要支援者の方の割引料金(証明するものをご提示ください)。 |
前売券 | 前売券は、大津市観光案内所(JR大津駅・石山駅・堅田駅前)、大津市民会館、ローソンチケット(Lコード:56641)をはじめ、京阪津地区の主なプレイガイドで2月3日から3月20日まで発売。 |
企画展「膳所城と藩政」リーフレット 【ダウンロードはこちら(PDF)】
企画展「膳所城と藩政」を紹介した『大津歴博だより109号』 【ダウンロードはこちら(PDF)】
大津・石山間湖岸風景眺望図 明治〜大正時代写 膳所藩資料館蔵 縦51.9 p 全長374 p
大津町から石山寺までの湖岸を対岸や舟上から眺望した絵巻で、写真は膳所城の部分。本図は膳所藩最後の藩主・本多康穣の甥、本多亀男が写したもので、原本は大正12年(1923)の関東大震災で失われたとのことです。
膳所藩陣立図 江戸時代後期 膳所藩資料館蔵 縦186 p 横514 p(一隻分)
膳所本多家の戦備えを描いた屏風です。「本」の文字の旗指物を具足の背に指し、整然と隊列を組んでいます。
膳所城かぶき門前普請絵図 天和4年(1684)滋賀県指定文化財 滋賀県立図書館蔵 縦72 p 横64 p
城下で発生した火災により中大手門の一部が類焼したことから、防火のため門前の道を拡張したときに作られた絵図です。堂々とした中大手門の構造や東海道筋に藁葺きの町家が並んでいた様子が分かります。
膳所総絵図 大津市指定文化財 元禄15 年(1702) 個人蔵 縦212 p 横332 p
膳所城と城下を描いた絵図としては最も詳しく、本丸をはじめとする城郭の規模や城下の侍屋敷や寺社の配置、東海道筋の町名などが詳細に記
されています。
本多俊次領内定書 慶安4 年(1651) 個人蔵 縦34.2 p 全長416.2 p
本多俊次が膳所藩領内の各村に対して出した定書。写真は巻末部分。年号月日の下に丸い黒印(糸印か)が押されています。
糸文字の和歌 作・高橋幸佑 膳所藩資料館蔵
縦16.2 p、全長117.0 pの折帖本の冒頭部分。
寿明君様江戸御下向につき膳所城下他道筋絵図 嘉永2年(1849) 膳所藩資料館蔵 縦16.8 p 横44.3 p
寿明君とは、後に13 代将軍となる徳川家定に嫁いだ一条秀子のこと。膳所城下通行に際し、道筋警固などのために造られた絵図で、警備状況とともに当時の城下の構造が分かり貴重です。
膳所藩烈士紙縒字短冊 慶応元年(1865) 本館蔵
慶応元年に逮捕、処刑された烈士が遺した紙縒字の和歌短冊です。写真には、述懐と
題した増田正房の和歌、高橋正功の漢詩と同幸佑による梅花図などが見えています。
膳所 鉄釉耳付茶入 銘童女 江戸時代前期 高さ7.5 p 本館蔵
展覧会をより深くご理解いただくため、期間中には関連講座を開催いたします。
聴講には、事前申込が必要です。詳細は講座・講演会情報をご覧ください。
3月10日(土) | 幕末の悲劇 ―膳所十一烈士事件― 講師:樋爪 修(本館館長) |
3月17日(土) | 【現地見学会】膳所城下町を探る 講師:樋爪 修(本館館長) |
3月24日(土) | 膳所藩の飛地領支配 講師:郡山 志保氏(甲南大学非常勤講師) |
4月7日(土) | 膳所城と粟津晴嵐の景観について 講師:横谷 賢一郎(本館学芸員) |
4月14日(土) | 膳所縁心寺文書を読む−藩主の菩提所とその史料− 講師:高橋 大樹(本館学芸員) |