博物館の活動紹介
第20回 博物館の新収蔵品について(平成18年度2期分)
博物館では、散逸しがちな地域の史料や文化財を積極的に収集・保存しています。今回は、平成18年度第2期の新収蔵品を紹介します。
大津絵 青面金剛 1幅 江戸時代(17世紀) (購入)
現存する大津絵青面金剛のなかで、最初期の作品。三枚継のため、画面も大きい。通常は省略されている夜叉が描かれているのが最大の特徴。また、怒髪の筋が描かれていたり、猿が御幣らしきものを振る点、および、日月に瑞雲がたなびくのも、大津絵では本作のみに見られる。
総じて、三枚継かつ、もっとも古様な図像を見せる大津絵青面金剛であるところに最大の価値がある。そして、最初期の青面金剛でなければ確認出来ない数々の特徴は、大津絵の青面金剛、ひいては仏画の図像が、漸次省略されながら定型化してゆく過程を辿ったことをうかがわせ、その点においても貴重な作例といえる。
安田雷洲 東海道五十三次大津 銅版画 1枚 江戸時代(弘化元年頃) (購入)
安田雷洲(生没年不詳)は、亜欧堂田善以降の洋風画家のなかでも、きわめて個性的な作風を展開した画人である。初期は葛飾北斎の門人として、文化11年(1814)の版本『橋供養』に、北斎とともに挿絵を担当している。その後、雷洲の画業の中心は銅版画へと移行し、合戦絵や地震絵をはじめ、西洋の風景銅版画を連想させる名所風景画を少なからず描いている。東海道五十三次揃物は、数多くの浮世絵師によって手がけられたが、本作は、唯一の銅版画作品である。人物・風俗表現を極力控え、街道風景として描かれている。
本来は、4図が一紙に刷られており、全部で14枚の揃物である。本作品は、最後の第14紙から切り離されてタトウに台貼りされたもの。画面上部には薄藍の一文字が手彩色されている。何度か改刻・再腐食され、版を重ねて刷り出された作品であるが、本品は、刻線や腐食具合から初刷りであると推定される。
時雨堂納置芭蕉像 1躯 江戸時代 (寄贈)
本像と厨子を納める木箱の蓋面には「嘉永紀元戊申(1848)夏 浪花南花堂主人所持 草窓舎槿枝伝之」とあり、また厨子は「亀甲形時雨堂」と名づけられ、先の槿枝が義仲寺の松で作ったことも記されている。
時雨堂の扁額の文字は、芭蕉が没した大坂南御堂の花屋の子孫とも記され、木箱の周囲には芭蕉忌の吟として13名の句が記されるなど、興味深い来歴を持つ像であるが、不明な点が多い。
石山園いちご狩ポスター 5枚 昭和初期 (寄贈)
戦前の観光関係印刷物においては、客が持ち帰るチラシや沿線案内が比較的残っているのに対して、ポスターは、残されるケースはあまり多くない。事業者のもとに残されたポスターが現代に伝わるケースがたまにあるが、本件もそのケース。事業者の自宅天井裏にまとめて保管されたまま忘れ去られていたものが、改築を機にこのたび発見されたもの。大津市内における戦前のいちご園については、これまで存在が確認されておらず、戦前の市内行楽施設群に新たなバリエーションを加えるもの。
なお、ポスターの発行時期については、ポスター上部の最寄り駅の表示が、蛍谷駅となっていることから、駅名が石山寺駅に改名される昭和12年(1937)が下限である。