大津市歴史博物館

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第27回 明治期の大津市街古写真

明治期の大津市街(大津市歴史博物館蔵)

  上の写真は、当館所蔵の明治期の大津市街を撮影した古写真です。三井寺(園城寺)観音堂の高台から大津市中心部に向かって撮影されています。位置関係を詳しく解説すると、手前から写真中央に伸びる道が長等神社前の参道、突き当たりのやや右手から上に伸びる筋が中町通、その右手の筋が京町通にあたります。
 この写真は、現物がB5サイズ程度大きさで、左下に「BIWA LAKE.599」の文字が刷り込まれています。この写真を誰が撮影したのかは今のところ不明ですが、この英文から幕末明治に外国人のみやげ物として販売されていたアルバム、いわゆる「横浜写真」である可能性が考えられます。
 写真は見渡す限りの瓦屋根で、視界をさえぎる建物が一切なく、湖岸まですっきりと確認することが出来ます。この写真を紹介するにあたって、年代特定を試みましたが、特徴的な建物がないため、逆に苦労するほどでした。
写真の左端、湖岸との境にすこし大きめの屋根が見えるのが、明治十三年(一八八〇)、大津‐京都間の鉄道開通時に設けられた大津駅舎と思われる建物です。当時の駅舎を撮影した写真は現在まで確認できていませんが、当時の引札に描かれた姿や平面図などから推定できます。また、写真右隅、手前の立木が途切れるあたりが現在の滋賀県庁にあたりです。現庁舎の前の建物が建設するのは、明治二十一年のこと。それが見えないことから、撮影年代は、鉄道開通の明治十三年から滋賀県庁が移転する明治二十一年までということになります。
 この写真は、明治期の写真であると同時に、「大津百町」とよばれた江戸時代の大津の様子をよく伝える写真ともいえます。一度撮影地と同じ場所に立ち、江戸時代の大津を想像してみてはいかがでしょうか。

(本館学芸員 木津 勝)