日本全国では、毎年約8,000回もの埋蔵文化財発掘調査が実施されています。本展は、近年、特に注目された遺跡について、発掘調査及び整理作業の成果を広く公開するため、文化庁の主催によって毎年開催されている全国巡回展です。
中核をなす「新発見考古速報」展では、旧石器時代から近代までの最新発掘成果のほか、特集では、東日本大震災の復興事業に関連して発掘された調査成果、過去の災害痕跡やそこからの復興史を示す遺跡の資料などを加え、全36遺跡を紹介します。
また、大津市歴史博物館では、今回唯一の関西会場として巡回展を開催するとともに「渡来した人々の足跡 ー大津の古墳群と集落跡−」と題して、大津市内の遺跡から多数確認される渡来文化を示す出土品に焦点をあてた地域展示を開催します。
タイトル | 発掘された日本列島2016 |
---|---|
会期 | 平成28年 8月6日(土)〜9月11日(日) |
開館時間 | 9時〜17時(展示室への入場は16時30分まで) |
休館日 | 月曜日 [祝日の翌日にあたる8月12日(金)は開館] |
会場 | 大津市歴史博物館 企画展示室A・B |
主催 | 文化庁、大津市、大津市教育委員会、大津市歴史博物館、京都新聞、全国新聞社事業協議会 |
協力 | 全国公立埋蔵文化財センター連絡協議会・全国埋蔵文化財法人連絡協議会・公益財団法人元興寺文化財研究所・共同通信社 |
後援 | 全国史跡整備市町村協議会・NHK大津放送局・BBCびわ湖放送・エフエム滋賀・エフエム京都 |
観覧料 | 一般:800円(640円) 高校生・大学生400円(320円) 小学生・中学生200円(160円) ※( )内は、前売り、15名以上の団体割引、または大津市内在住の65歳以上の方、市内在住の障害者の方、市内在住の介護保険の要介護者・要支援者の方の割引料金(証明するものをご提示ください)。 |
前売券 | 前売券は、大津市観光案内所(JR大津駅・石山駅・堅田駅前)、大津市民会館、ローソンチケット(Lコード:58457)をはじめ、京阪津地区の主なプレイガイドで7月8日(金)から9月11日(日)まで発売。 |
日本列島では、毎年8,000件近い発掘調査が行なわれています。このうち、近年発掘された遺跡や、長年の整理作業によって、成果がまとまった注目の22遺跡を紹介します。
星ケ塔黒曜石原産地遺跡は、霧ヶ峰山塊の北西部に位置する星ケ塔山の東斜面、標高1,500メートルの林の中に広がっています。この場所は縄文時代の黒曜石の採掘跡でした。採掘された黒曜石は、自然科学的な産地推定分析により、縄文時代前期以降、東北から東海・北陸地方までの極めて広い範囲に供給されていたことが明らかになっています。
黒曜石の原石[星ケ塔黒曜石原産地遺跡出土] 下諏訪町教育委員会蔵
ほぼ完全な形に復元された縄文時代中期の土器群です。流麗で躍動感のある文様が特徴です。また文様の特徴は、東北など遠隔地域との交流を示すものも多く認められます。良好に復元できる土器がこれほどまとまって出土することは少なく、縄文社会の動態を知る上で、極めて重要な情報をもたらしてくれます。
さまざまな形の縄文土器[六反田南遺跡出土] 新潟県埋蔵文化財調査事業団蔵
岸田遺跡は、福岡市西部に広がる早良平野の最南部にある、弥生時代を中心とする大規模な集落・墓地跡です。丘陵上の墓域からは、甕棺墓78基、木棺墓。土抗墓8基を検出し、うち5基から青銅製の武器が出土しました。展示では、甕棺のほか、銅剣や銅矛などを紹介します。
銅剣・銅矛の出土状況[岸田遺跡] 福岡市教育委員会蔵
写真の埴輪は、古墳の後円部墳頂に立て並べられていた5個の家形埴輪のうち、最も良好に復元できたものです。切妻屋根と8本の角柱からなる高床建物が表現されています。家形埴輪が配置された場所の周囲には丁寧な石敷も施されており,墳丘上で行われた当時の葬送儀礼の情景をよく伝える貴重な資料です。
墳頂に並んでいた家型埴輪[甲立古墳出土] 高さ68.3p 安芸高田市教育委員会蔵
鬼の全身像を描いた鬼瓦です。平城宮大極殿の建物に使用されるために作られたものとみられます。鬼瓦に「鬼」の図像を表すようになったのは奈良時代になってからで、鬼の全身像を描く鬼瓦は初期の型式で、その後は鬼の顔のみを描くものに変化しました。中山瓦窯跡では、鬼瓦の他にも平城宮に用いられる瓦を多数生産していました。
鬼の全身像が描かれた鬼瓦[中山瓦窯跡出土] 高さ40p 奈良文化財研究所蔵
茨城県南部に位置する神屋遺跡からは、全国的にも類例の少ない火熨斗(ひのし)が出土しています。銅製の火皿の中に炭火を入れて熱し、布のしわを取るもので、現在のアイロンのように使われました。また、土製・石製・鉄製の紡錘車が出土しており、神屋遺跡には糸や布を作った集落があったと考えられています。
古代のアイロン 火熨斗[神屋遺跡出土] 長さ27.7cm (公財)茨城県教育財団蔵
岩国市の平地に築かれた、13世紀末から14世紀頃の居館跡です。広大な居館を守る土塁は、盛り土した外側に花崗岩を積み上げるなど、非常に強固な造りをしています。また、居館の中央付近からは、推定4〜5万枚もの輸入銭を納めた備前焼の大甕が出土しました。これは、貯蓄用に埋められた備蓄銭だと考えられます。銭はわら紐でひとくくりに束ねられており、当時流通していた状態をとどめています。
推定4〜5万枚におよぶ埋納銭[中津居館跡出土] 岩国市教育委員会蔵
この瓦は伏見城跡に伴う堀の中から出土した金箔付きの瓦です。屋根瓦の先端部分に使う軒平瓦で、唐草文様が表されています。豊臣秀吉に関わる城郭等に用いられる金箔瓦は、文様の浮き出た部分に金箔を貼る特徴があります。きらびやかな瓦で飾られた城は、秀吉の豪勢な生活ぶりを象徴するようです。
金箔軒平瓦[伏見城跡出土] 幅27p 京都市文化市民局文化芸術都市推進室文化財保護課蔵
東日本大震災からの一日も早い復興と、埋蔵文化財保護の両立を図るため、現在、岩手・宮城・福島の三県では、全国からの支援を受けながら、発掘調査が急ピッチで進められています。今回は、3県から7遺跡を紹介します。
復興へ向けた取組みとともに、震災の記憶を風化させず、将来の災害に対する危機意識や防災意識を持ち続けることも大切です。発掘調査によって明らかになった過去の災害痕跡と、そこからの復興の歴史に焦点をあてた展示を行い、先人からの警鐘に耳を傾け、将来の防災へのヒントを探ります。過去の復興史をよく示す代表的な7遺跡を紹介します。
大津市内の古墳や同時期の集落の跡からは、少し変わった遺物や建物の跡などが見つかっています。例えば、古墳の副葬品として納められたミニチュアサイズに作られたかまどのセット、かんざし等の装身具です。また集落跡からは、大壁建物やオンドル等の特徴的な施設の跡が確認されています。これらは、古代に中国や朝鮮半島から日本列島にわたってきた人々(渡来人)の影響を受けたものと考えられています。
地域展示では、古代の渡来文化を示す出土品について、大津市内の調査成果を中心に、大和・河内地域の資料とともに紹介します。
騎馬文化の広がりを示す馬具
重要文化財 馬具[新開1号墳出土] 滋賀県立安土城考古博物館蔵
王を飾る金銅の冠
金銅製冠復原品[鴨稲荷山古墳] 高島市教育委員会蔵
副葬された腕輪
銀製釧・金銅製釧[太鼓塚33号墳] 大津市埋蔵文化財調査センター保管
お墓の中の小さなカマド
ミニチュア炊飯具形土器[穴太飼込古墳群,、福王子古墳群、大谷南古墳群出土] 滋賀県立安土城考古博物館蔵
期間中、学芸員によるギャラリートークを開催します!!
地域展示「渡来した人々の足跡」を担当学芸員が解説します。
日程:8月10日(水)・24日(水) 各日程とも 午後2時から(30分程度)
※申し込み不要。なお、参加には当日の企画展観覧券が必要です。
展覧会をより深くご理解いただくための講座を開催いたします。
8月 6日(土) 高島鴨稲荷山古墳と継体大王
講師:東潮氏(徳島大学名誉教授)
8月20日(土) 渡来人の集落とお墓―最近の市内の調査成果より―
講師: 西中久典(大津市教育委員会文化財保護課)
8月27日(土) 発掘された日本列島2016 徹底解説
講師: 近江俊秀氏(文化庁文化財部記念物課 文化財調査官)
9月4日(日) 近江に渡来した人びとの活躍―横穴式石室・副葬品・大壁建物を中心として―
講師: 吉水眞彦(大津市教育委員会文化財保護課)
聴講には、事前申込が必要です。詳細は決定次第、講座・講演会情報でご紹介します。
『発掘された日本列島2016』展の公式図録です。全国巡回展の内容が網羅されています。大津市歴史博物館では、会期中のみ会場で販売します。一般書店などでお買い求めいただけます。当館での通信販売等はいたしません。
地域展『渡来した人々の足跡−大津の古墳群と集落跡−』展の公式図録です。
企画展「発掘された日本列島2016」リーフレット(A4版、表裏)【PDF 1.2MB】