旧東海道沿い、大津市馬場の義仲寺(ぎちゅうじ)には、俳聖の松尾芭蕉(1644〜1694)が眠っています。今でこそ、美しい境内が守り伝えられていますが、芭蕉亡きあとの18世紀ごろには、すでに荒廃がすすみ、半ば忘れられた寺院でした。それを嘆き、生涯をかけて復興に努めたのが蝶夢(ちょうむ,1732〜1796)です。彼は芭蕉の百回忌に向けて、義仲寺の翁堂(芭蕉堂)を復興し、さらに本尊の松尾芭蕉像に奉納するため、11年の歳月をかけて本格的な松尾芭蕉伝記絵巻として「芭蕉翁絵詞伝」を制作しました。
この芭蕉翁絵詞伝は、義仲寺の寺宝として、長く門外不出の扱いを受けており、前回の公開は、1994年に本館にて開催した芭蕉没後300年記念展「芭蕉と近江の門人たち」が最後です。21世紀になってからも封印状態でしたが、2年前に絵詞伝が本館に寄託され、公開が可能となりました。
今回は、本館開館30周年記念として、「芭蕉翁絵詞伝」全巻を公開します。あわせて、これまで展示される機会のなかった義仲寺の寺宝・俳諧資料も紹介します。
タイトル | 開館30周年記念企画展 「芭蕉翁絵詞伝と義仲寺」 |
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会期 | 令和3年(2021年)2月27日(土曜)から4月11日(日曜)まで |
開館時間 | 午前9時から午後5時まで(展示室への入場は午後4時30分まで) |
休館日 | 月曜日 年間の休館日カレンダー |
会場 | 大津市歴史博物館 企画展示室A |
主催 | 大津市、大津市教育委員会、大津市歴史博物館 |
特別協力 | 義仲寺 |
後援 | 朝日新聞大津総局、e-radio、NHK大津放送局、京都新聞、共同通信社大津支局、KBS京都、産経新聞社、時事通信社大津支局、(株)ZTV滋賀放送局、中日新聞社、日本経済新聞社大津支局、BBCびわ湖放送、毎日新聞大津支局、読売新聞大津支局 |
観覧料 | [常設展示観覧料でご覧いただけます] 一般:330円(260円) 高校生・大学生:240円(190円) 小学生・中学生:160円(130円) ※( )内は15名以上の団体料金 ※大津市内在住の65歳以上の人は、小中学生料金と同額。 ※大津市内在住の障がい者・介護保険の要介護者及び要支援者とその介護者1名は無料(証明するものをご提示ください)。 |
以下から、チラシのダウンロードができます
会期中に、展覧会の関連講座(有料・要申込)を開催いたします。
申込方法など、詳しくは講座・講演会情報をご覧ください。
2021年3月13日(土曜)15時〜16時 | 「芭蕉 伊賀時代からの旅立ち」 講師:岡本 栄 氏(伊賀市長) |
2021年3月18日(木曜)15時〜16時 | 「歴史資料から読み解く義仲寺」 講師:高橋 大樹(本館学芸員) |
2021年3月20日(土曜・祝日)午後 | 現地見学会「義仲寺と竜が丘俳人墓地」 講師:横谷 賢一郎(本館学芸員) |
2021年3月30日(火曜)15時〜16時 | 「芭蕉翁絵詞伝 絵師と作品」 講師:福田 道宏 氏(広島女学院大学教授) |
生涯を芭蕉の顕彰に捧げた蝶夢が、芭蕉の百回忌法要の記念事業として完成させた、総延長40メートル、絵と詞各33段、上中下全3巻からなる大作の伝記絵巻です。寛政4年(1792)、芭蕉百回忌前年の命日に奉納されました。寛政度の御所障壁画制作を担当した狩野正栄至信の手によって、芭蕉の生涯や足跡が臨場感豊かに、入念に描写されています。いわゆる芭蕉イメージの普及に貢献した作品です。
芭蕉翁絵詞伝より浮御堂月見の舟遊び(一部) 義仲寺蔵
芭蕉翁絵詞伝より粟津の松並木(一部) 義仲寺蔵
芭蕉没後、芭蕉門人の俳諧書跡も失われつつあったなか、蝶夢が10年以上の歳月をかけ、伊賀・近江・伊勢・尾張・武蔵の門人の遺族や子孫を訪ね歩き、寄付を懇願して収集し、蕉門書跡アルバムに仕立てたものです。79点の俳諧書跡のほとんどに寄付者名が記録され、うち7点は寄贈年月日も判明します。蝶夢の情熱と律義さに驚かされます。
牡丹や菊、燕子花(かきつばた)など、合計15面からなる格天井の花卉(かき)図。本作は、数少ない若冲の天井画のひとつで、若冲独自の図案的センスと構図感覚が発揮された四季の草花図(花卉図)となっています。安政6年(1859)に、大津柴屋町の魚屋通六が義仲寺に寄進しました