大津市歴史博物館

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博物館の活動紹介

第3回 博物館の新収蔵品について(平成17年度1期分)

 ともすれば、散逸しがちな地域の史料や文化財を積極的に収集・保存し、展示の場で、地域を物語らせる事は、博物館の重要な役目のひとつです。今回は、今年度の新収蔵品をまとめて紹介します。

大津絵 長刀弁慶 一幅 江戸時代中期(購入)

 大津のなかでも長刀弁慶は、鬼の念仏や藤娘と並んで人気画題であり、幕末の大津絵十種にも選ばれています。本作品は、同図様の作品が何点も確認されている江戸中期の二枚継ぎ物ですが、筆がよく走り、描写が優れた作品の一つといえます。なお、表具は民芸運動の影響を受けており、非常にお洒落な格子模様の紙を中廻しに用いています。

狼図 紀楳亭 寛政四年(1792) 一幅 茂呂利根氏寄贈

 「九老」の別号で知られる紀楳亭(1734〜1810)は、与謝蕪村に師事して文人画と俳諧をよくしました。蕪村の俳画ばりの軽妙な人物画や、文人山水画を多く残し、「近江蕪村」と呼ばれました。狼を、つぶらな眼で人なつこさすら感じさせる姿に描いた、彼の人柄がうかがわれます。

寿老人図 長谷川玉純 一幅  茂呂利根氏寄贈

 玉純(1863〜1921)は、玉峰(大津祭源氏山天井画の作者)の長男。大津栄泉寺書院を画房として活動する一方、大津尋常高等小学校や大津実科女学校の図画教員を勤め、市内に多数の作品を残しました。本作は七福神の寿老人が、愛玩動物のように眷属の鶴にもたれかかる面白い作品。

月下帰樵図 柴田晩葉 一幅   茂呂利根氏寄贈

 柴田晩葉(一八八五〜一九四二)は大津新町の生まれ。京都市立美術工芸学校、同絵画専門学校卒業後、山元春挙に師事。春挙塾の早苗会で活躍するとともに、文展・帝展でも入選を重ねました。大津では、渡辺公観と書画会を開催し、席上揮毫作品の頒布会は好評を博したと伝えられます。

大津絵 長刀弁慶 狼図 寿老図 月下婦樵図
大津絵 長刀弁慶 狼図 寿老図 月下婦樵図

京枡 茂呂家伝来 一点 江戸時代 茂呂利根氏寄贈

 江戸時代、大津の商人であった茂呂家伝来の酒枡(一升枡)。枡の形態は江戸幕府公認の江戸時代初期の「京枡」で、由緒を記した箱書とも時代が符合し、大津町の商業を考察するうえで貴重な史料。

茂呂家文書 三四五点 江戸から昭和時代  茂呂利根氏寄贈

 先の茂呂家に伝わった古文書群。同家は商人(煙草屋)でありながら、俳人も輩出しており、煙草屋仲間関係、居住地である小唐崎町の町政関係(町絵図を含む)、和歌・俳諧など教養に関するものなど多岐にわたっている古文書史料です。

長等山三井寺図版木 一点 明治時代 山村善一郎氏寄贈

 三井寺(園城寺)の大門、金堂から観音堂までの一山が鳥瞰図風に彫られています。観音堂左手の高台に、明治11年(1878)建立の西南戦争出征記念碑が描かれていることから、版木の制作時期もそれ以降と考えられます。

源右大将上洛之図 歌川貞秀 一点 山村善一郎氏寄贈

 貞秀は、幕末期に、パノラマ名所絵で一世を風靡した浮世絵師。本作品のタイトルは「源右大将上洛之図」となっており、源頼朝の上洛になぞられていますが、実際は、瀬田唐橋を渡る参勤交代の大名行列風景と近江八景を描いています。

源右大将上洛之図
源右大将上洛之図

御家流手鑑 一五件 江戸時代 山口善史氏寄贈

 御家流は、青蓮院門跡尊円親王(1298〜1356)が創始した書法で、後に和様書道の本流となった。本作品群は、山口善造氏(故人)の収集による御家流の手鑑(江戸時代の写本)です。

大織冠(複製)付:藤原鎌足像 1点 昭和時代  山口善史氏寄贈

高槻市阿武山古墳から出土した遺物の写真

 昭和9年に発掘された高槻市阿武山古墳から出土した遺物が、藤原鎌足の大織冠と推定されています。鎌足は中大兄皇子(天智天皇)の盟友であり、大津宮にも関係が深いことから、故山口善造氏が、困難な金モールを含めて復元されました。

創燿技作品 四点 昭和時代  山口善史氏寄贈

 創輝技とは、山口善造氏(故人)が創始した銀の科学変化を利用した芸術作品。創造・燿変・技道の三つの言葉から命名されました。今回、太平記・幻住庵記・明恵上人詞書・平家物語を題材とした作品を御寄贈いただきました。