大津市歴史博物館

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博物館の活動紹介

第33回 博物館の新収蔵品について(平成20年度分)

 博物館では、散逸しがちな地域の史料や文化財を積極的に収集・保存しています。今回は、平成20年度の新収蔵品を紹介します。



蜀道積雪図 横井金谷筆  1幅 (購入)

草津出身で、坂本で没した文人画家の奇僧・横井金谷(1761-1832)による晩年の大作。金谷は、与謝蕪村の山水をさらに誇張した独特の作品を描き、近江蕪村の異名を持つが、本作も、大正11年の『蕪村画集』への収録以降所在不明の蕪村画「蜀桟道図」を模したもの。ただし、蕪村の「蜀桟道図」より、さらに深遠かつ峻険さを増した山水表現となっている。



柴門書屋図 横井金谷筆  1幅 (購入)

金谷が、蕪村画学習を本格的に始めたのは「吾五十有五而志学」(われ五十有五にして学を志す)の遊印を用い始めた時期である。その時期、金谷は名古屋在住であったが、ほどなく近江に移住して餐霞堂という名の画室を坂本に構える。本作は、霞を食べて仙人さながらの気分ですごす金谷の気分が伝わってくる作品。

横井金谷 蜀道積雪図 横井金谷 柴門書屋図
横井金谷 蜀道積雪図 横井金谷 柴門書屋図


紀楳亭書状貼交屏風  二曲一隻 (購入)

 与謝蕪村の門人で、大津に在住した紀楳亭(1748-1810)が、大津の俳人仲間と交わしたと思われる書状20通を貼り交ぜた屏風。蕪村門人でありながら自作の発句をあまり確認できなかった楳亭だが、この書状においては、自然体で次々に発句を詠んでは書き付けている。
○杓も取らず 雪をつまんで 手洗いせん
○雪掃て 四角に残す あき家のあと
○上着壱つ き替てこけん 今朝の雪

紀楳亭書状貼交屏風 紀楳亭書状貼交屏風部分
紀楳亭書状貼交屏風 紀楳亭書状貼交屏風(部分)


蜀棧道図  紀楳亭筆  1幅 (購入)

 同じく紀楳亭の作品。図柄は、急峻な断崖をクローズアップし、崖に設けられた心もとない桟道を行く人馬の姿が描かれている。

紀楳亭 蜀桟道図
紀楳亭 蜀桟道図


大津絞油屋仲間等資料 14点 (大津市・芝田巳千夫氏寄贈)

 大津絞油屋仲間(同業者組合)の年行事・惣代から、大津代官・京都町奉行に提出された願書の綴じ7冊と仲間鑑札7点からなる。大津町内の他の諸仲間や京都の仲間との争論の様子などを記録したもので、従来明らかではなかった同仲間の実態を知るうえで貴重といえる。また仲間の構成員であることを証明する鑑札は、絞油屋仲間の他、米仲買、水揚仲間、薪問屋仲間のものが含まれている。

絞油屋仲間他鑑札
絞油屋仲間他鑑札


観念寺鬼瓦 11点 (大津市・観念寺寄贈)

 浄土宗観念寺の本堂等に葺かれていた鬼瓦10点と留蓋(飾瓦)1点。なかでも、正徳4年(1714)の本堂下り棟瓦は三面鬼瓦であり、他地域でもあまり見られない貴重なものである。いずれも、作者は松本村(大津市松本)の瓦師として知られる井上七左衛門である。

観念寺三面鬼瓦
観念寺三面鬼瓦


九品寺鬼瓦 6点 (大津市・九品寺寄贈)

 浄土宗九品寺に葺かれていた鬼瓦。注目すべきことは、同寺の瓦製作に、西村半兵衛、飯塚出雲守、清水九太夫と、多彩な瓦師が関与していることである。特に桟瓦の発明者として知られる西村半兵衛作の鬼瓦は、延宝5年(1677)と古く、また、飯塚・清水といった松本村瓦師の作品も含まれる。観念寺鬼瓦とともに、かつての大津での瓦生産の実態を示す貴重な歴史資料である。

九品寺西村半兵衛作鬼瓦
九品寺西村半兵衛作鬼瓦


旧滋賀郡小野村文書 56点 (京都市・大原古文書研究会寄贈)

 かつて大津市内小野村(旧志賀町)に伝わった古文書群。内容は、小野神社境内観音堂に秘仏として伝わる毘沙門天立像(平安時代)の縁起のほか、明治時代後半から大正年間の日記帳、年貢関係の出納帳などからなっている。従来収集されていた同村文書の欠落部分を補える資料として貴重な古文書群と評価できる。

旧滋賀郡小野村文書
旧滋賀郡小野村文書


瓦製作道具 116点 (中川製瓦・中川安始氏寄贈)

 今回の寄贈資料は、平成まで使用されていた瓦の製作道具一式。粘土を切り取って、おおまかな瓦の形にするための成形台や、最終的に瓦の形に仕上げるロクロ式の調整台、その過程で使用するコテやヘラ、瓦当の文様を作るときの瓦当笵などから構成されており、市内での瓦生産がほぼ絶えてしまった現状の中で、かつての市内での瓦産業の実態や製作方法を今に伝える貴重な文化財といえる。

瓦製作道具・調整台
瓦製作道具・調整台


大津鳥瞰図 城下豊榮筆 1点 (大津市・岸本登氏寄贈)

 かつて大津市の湖岸にあった旅館「八景館」のロビーに飾られていた肉筆の鳥瞰図。作者の城下豊榮は、当時のパノラマ鳥瞰図として著名な吉田初三郎の門下と思われるが、詳細は不明。制作年代は、描かれた建物や豊榮の活動時期から推定し、昭和10年代のものと推定できる。当時の大津市内の観光地や史跡などが、丹念に描き込まれており、観光都市大津の歴史を知ることのできる恰好の資料といえる。

大津鳥瞰図 城下豊榮筆
大津鳥瞰図 城下豊榮筆
大津鳥瞰図 城下豊榮筆(部分)
大津鳥瞰図 城下豊榮筆(部分)