大津市歴史博物館

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第38回 博物館の新収蔵品について(平成23年度1期分)

 博物館では、散逸しがちな地域の史料や文化財を積極的に収集・保存しています。今回は、平成23年度1期の新収蔵品を紹介します。



紀楳亭 猿猴図 紀楳亭 猿猴図(部分)
紀楳亭 猿猴図

紀楳亭 猿猴図  1幅  江戸時代(18世紀末) 絹本淡彩 (購入)

紀楳亭(1734-1810)は、山城国鳥羽の生まれ。与謝蕪村に絵と俳諧を学ぶ。とりわけ彼の描く文人画には、蕪村風がよく継承されており、近江蕪村と呼ばれた。同門に、大津石川町長寿寺の僧、龍賀がおり、天明8年(1788)の京都大火に罹災した折は、龍賀を頼って大津に移住した。その後、ほどなく「湖南九老」と号するようになった。
楳亭の作例は、基本的には蕪村風の山水画や人物画が多く、純然たる走獣画の作例は少ない。同時期の文人画家は、例えば中林竹洞などの作例に見るように、通常は中国を意識して、南宋時代の牧谿が描いたような手長猿を描くところなのだが、本作に描かれるのは、立派な体格の日本猿である。



絵変り十種大津絵貼交屏風 平忱印 絵変り十種大津絵貼交屏風 平忱印 絵変り十種大津絵貼交屏風 平忱印
絵変り十種大津絵貼交屏風 平忱印

絵変り十種大津絵貼交屏風 平忱印  1隻(9枚貼付) 明治〜大正時代 絹本著色 (寄贈)

十種大津絵のキャラクターが、可笑しみのある発想によってパロディ化されて、描かれた作品。作者の平忱に関する画歴は不詳。流派的な特徴も窺われない。



滋賀県物産陳列場土産物関係資料 滋賀県物産陳列場土産物関係資料
滋賀県物産陳列場土産物関係資料

滋賀県物産陳列場土産物関係資料  一括  大正・昭和時代 (寄贈)

県内の土産物の図案および大津絵関係の絵葉書からなる、寄贈者の父の遺品。 父は大正末から昭和初期に、滋賀県物産陳列場(現在の長等小学校敷地内にかつて所在した)に勤務していた。当時、同場では県内企業の希望に応じ、図案等の作成を仲介しており、資料に含まれる西崎快平の図案は、これらの希望にあわせて作成されたものと思われる。
大津では、明治末から大正にかけ大津絵に取材した人形等が数多く制作された。その中で、材木町在住の中村松次郎は、竹筒をキャラクターの姿に透かし切りして絵付けした「丸竹人形」を大正14年に考案し、販売した。丸竹人形は現存しないが、バリエーションには、大津絵十種や伊吹山スキー人形があったといわれており、本資料中の図案と符合する。両者の関係を直接結び付ける資料はないものの、当時の県商品陳列場の活動や、物産品の制作過程を伺うことのできる資料と考えられる。



紙本著色金剛童子像
紙本著色金剛童子像

紙本著色金剛童子像 1幅 江戸時代 (寄贈)

六臂で青色の金剛童子像。金剛童子は金剛杵の力を神格化したもので、胎蔵界曼荼羅の金剛手院の中にみられる。主として台密で用いる、体の色が黄色い「黄童子」と、東密で用いる青色の「青童子」が知られる。儀軌によれば、「青童子」は、大海中の宝山の上の蓮台を左足で踏み、右足は海中にある。身色は吠瑠璃(べいるり。瑠璃に同じ)色で六臂あり、各手には様々な金剛杵などの武器を持ち、身に大蛇をからめ、毒蛇をもって腕釧や足釧としている、とする。本画を見ると、青色で六臂以外の図像的特色も儀軌に通じ、台密の金剛童子(青童子)であることがあきらかである。ちなみに「黄童子」は、園城寺が中心寺院で、掛幅の黄金剛童子が重要文化財に指定されている。
やや傷んではいるものの、当初の彩色がよく残り、江戸時代の密教絵画を知る上では貴重なものと思われる。




露国皇太子殿下見舞品献上に付礼状
露国皇太子殿下見舞品献上に付礼状

露国皇太子殿下見舞品献上に付礼状 1紙 明治時代(明治24年) (寄贈)

明治24年5月11日午前、ニコライ皇太子は三井寺観音堂見学の後、太湖汽船で唐崎の松を見学したが、それに際し、下阪本村の住民が趣向を凝らして出迎えた。大津事件発生後、全国から皇太子のもとへ見舞品が贈られるが、先の唐崎訪問の縁で、下阪本村民からも見舞品が献上されたようだ。同資料は、沢田安次郎が「唐崎古松実生壱盆」を献上したのに対し、下阪本村長から発行された礼状。文面を読むと、下阪本村として見舞品を募集し、沢田氏がそれに応じたということが分かる。



明治大正昭和期地図資料
明治大正昭和期地図資料

明治大正昭和期地図資料 一括(91点) 明治〜昭和時代 (寄贈)

明治から昭和時代にかけての各府県地図などの一括資料。特に明治37〜39年にかけて発行された地図には、同28年発行の「新旧対照市町村一覧」と題した冊子が付録としてついている。当時の全国市町村の動きとともに、地図では街道や鉄道網なども詳細に記入されている。また大正期の地図は「東宮御成婚記念 日本交通分県地図」と題されており、国鉄(当時)、私鉄及び未成線路なども丹念に記入されている。



マックス・ダウンテンダイ著作等関係資料
マックス・ダウンテンダイ著作等関係資料

マックス・ダウンテンダイ著作等関係資料 一括(26点) 明治〜昭和時代 (寄贈)

マックス・アルベルト・ダウンテンダイ(1867〜1918)はドイツ・ヴュルツブルクに生まれ、成長して詩作にふけり世界を歴訪、その途次日本にも立ち寄り、近江八景の風景に心を打たれたことから、「近江八景の幻影」を著述。そのことが縁となり、昭和54年、大津市とヴュルツブルクは姉妹都市提携を結んだ。寄贈者は、平成16年にダウンテンダイの先の著作を翻訳出版された方のお一人で、同家に贈られた「近江八景の幻影」の初版本(1911年)を始めとする一連の著作やヴュルツブルク市長から贈呈された記念メダルなど関係資料である。