大津市歴史博物館

博物館の活動紹介

第43回 博物館の新収蔵品について(平成25年度)

 博物館では、散逸しがちな地域の史料や文化財を積極的に収集・保存しています。今回は、平成25年度の新収蔵品を紹介します。



大津絵 藤娘 大津絵 松に鷹 俳画「風一過」 山元春挙筆

大津絵 藤娘 1面 江戸時代 (購入)

 大津絵を代表する画題の藤娘。良縁を結ぶ験担ぎとして人気があった。本作は、藤娘の作例の中でも初期にさかのぼる作品で、約320年前に描かれたものである。肉筆浮世絵風の作品で、大津絵ではあるものの美人画としての完成度も高く、優れた作品。

大津絵 松に鷹 1幅 江戸時代 (購入)

 大津絵においては非常に珍しく、また、古い作例。衰えぬ繁栄の象徴である松に、武威を天下に示す象徴の鷹がとまることで武門の誉れとお家繁栄を願う。

俳画「風一過」 山元春挙筆 大正時代 1幅 (購入)

 竹内栖鳳と並ぶ近代京都画壇の双璧で、膳所出身の山元春挙は、句集・狂歌集『蘆花浅水』を自費出版するほどの俳句・狂歌好きであった。本作も屈託のない俳味で軽妙に季節感を表現している。



黒田粱洲・麹廬父子関係資料 坂本旅宿絵図
黒田粱洲・麹廬父子関係資料 坂本旅宿絵図

黒田粱洲・麹廬父子関係資料 一括(31件・37冊) 江戸・明治時代 (購入)

 膳所藩校・遵義堂の師範頭取であった黒田粱洲および子で蘭学師範の麹廬に関係する写本類。粱洲の詩文集をはじめ、麹廬の履歴書や孫の梁太郎の日記も含まれる。


大津町図 1鋪 江戸時代(弘化2年) (購入)

 江戸時代の大津町を俯瞰的に描いた絵図。山・水・町家・御屋敷・寺社に色分けし、大津町内の町名、関(港)名、寺社、また逢坂山の谷の名称・境界を詳細に記している。枠外に「平安奥田珍蔵、弘化二巳八(月脱ヵ)田内写置」とあることから、弘化2年(1845)に原本から写したものであると考えられる。


坂本旅宿絵図 1鋪 江戸時代 (購入)

 大津市坂本の里坊を示した略図。各里坊に朱筆で「中井」「棟梁」「御取調役」「御勘定方」「山上行普請役二人」などの文字が記されている。このことから、延暦寺三塔のいずれかの普請にかかる宿所配置を描いたものだと考えられる。


彦根藩大津蔵屋敷之図
彦根藩大津蔵屋敷之図

彦根藩大津蔵屋敷之図 1鋪 江戸時代後期 (購入)

 江戸時代、大津百町の湖岸には、近江国内にあった諸藩の領地から集めた年貢米を収める蔵屋敷が建ち並んでいた。今回の資料は、旧橋本町(現浜大津一丁目)にあった彦根藩大津蔵屋敷の絵図。屋敷内部の敷地割や米蔵、稲荷社などの配置が詳しく記されている。


大将人形・雑兵人形
大将人形・旗持人形

大将人形・旗持人形 2躯 文化6年(1809)(寄贈)

 京都の四条柳馬場西入の人形工師、玉屋久治郎によって、文化6年5月に完成した大ぶりの大将人形と旗持人形。当時の最高級のあつらえ人形であるとともに、依頼者・制作者・制作年月・支払金額等が箱書きからわかる、貴重な人形である。


百人一首歌かるた
百人一首歌かるた

百人一首歌かるた 2組 江戸時代 (寄贈)

 木版手彩色による、いわゆる版彩色かるた。2組のうち通常サイズのかるたは、各々の歌仙ごとに版木を制作している点から、ややコストをかけた版彩色かるたである。もう一方のひなかるたは、墨版が完全に摩耗しており、大量に摺られて販売された人気かるたであったことがわかる。


矢立 江州堅田物語
矢立 江州堅田物語

矢立 一括(100挺) 江戸−明治時代 (寄贈)

 携帯筆記具として旅人の必需品であった矢立のコレクション。非常にコンパクトで実用本位のものから、意匠に凝った工芸品的なものまであり、中には方位磁針内蔵型や極小硯附属のものも含まれる。


江州堅田物語 1冊 天和3年(1683) (寄贈)

 天和3年(1683)11月に発刊された版本(全18丁)。著者は堅田住の中村重吉。内容は、旅人が堅田で出あった老人に、この地の由緒を聞くという設定で、老人の言葉を借りて、堅田の由緒が紹介される。現代まで受け継がれた堅田の由緒の基礎となる記録で、地域の歴史をひもとく貴重な資料と言える。



大津陸軍少年飛行兵学校装備品 入江家資料
大津陸軍少年飛行兵学校装備品 入江家資料(引札)

大津陸軍少年飛行兵学校装備品 7点 昭和 (寄贈)

 陸軍少年飛行兵学校が当時使用していた鉄カブトや陸軍軍帽、水筒、革製カバンなど。戦時中、現県立大津商業高校付近一帯には陸軍少年飛行兵学校があった。


入江家資料 一括(199点) 明治−昭和 (寄贈)

 大津・京都・大阪の商店引札や県立大津高等女学校の卒業写真、教科書など。特に引札は各商店が正月に配った宣伝用チラシで、七福神といった縁起物が多く、図柄の凝ったものが多い。



北ア家近現代資料 飛田家戦時資料
映画館資料および戦時資料(防空訓練) 飛田家戦時資料

映画館資料および戦時資料 一括(14点) 大正−昭和 (寄贈)

 浜通りの旧甚七町にあった映画館・稲荷座(後の帝国館、現松本二丁目)で上映された映画の題名が列記された手帳や、寺町通り付近の戦時中の防空訓練風景写真など、大正から昭和にかけての大津の歴史や風景が分かる諸種の資料が含まれている。


飛田家戦時資料 一括(23点) 大正−昭和 (寄贈)

 寄贈者のお父様である飛田源吾氏が、満州に従軍されたときの戦争関係資料。勲章や勲記、記章や軍靴などからなる。



東海道線踏切改良工事写真アルバム 昭和御大典記念写真帳
東海道線踏切改良工事写真アルバム 昭和御大典記念写真帳

東海道線踏切改良工事写真アルバム 2冊(全160枚) 昭和40年代 (寄贈)

 国鉄東海道線の踏切改良工事を記録した写真アルバム。東海道線は昭和31年の電化により走行本数が増え、従来の踏切が交通渋滞を引き起こした。そのため昭和40年頃に橋梁化工事が順次実施されるが、アルバムには着工前後の写真が貼られ、鉄道沿線の風景の変遷がよく分かる。


昭和御大典記念写真帳 1冊 昭和3年 (寄贈)

 昭和3年の御大典記念を祝して編集された写真帳で、県内各小学校教職員の整列写真が一冊に綴じこまれている。学校の旧校舎の一部や、教職員の戦前らしい服装も写っており、興味深い。



西村榮次郎氏撮影写真 中野家資料
西村榮次郎氏撮影写真(はり丸) 中野家資料(湖岸を走る蒸気機関車)

西村榮次郎氏撮影写真 一括(139枚) 昭和30年代 (寄贈)

 故西村榮次郎氏が昭和30年代に大津市中心市街地の町並みや市内の社寺等の観光地の写真を中心に撮影したカラースライド。カラー写真が日本において普及しはじめた頃の大変貴重な写真である。また、スライドのほとんどに、撮影年月が記されている。


中野家資料 一括 明治−昭和 (寄贈)

 京町通りにあった米商に伝わる資料。特に明治17年起筆の「記録簿」には、同24年に勃発した大津事件の生々しい記録が見える。また、絵葉書の中には、大津市街地の風景の変遷が伺えるものが含まれている。



龍吐水
龍吐水

龍吐水 1基 天保13年(1842) (寄贈)

 龍吐水は江戸時代における消防機材として利用されたもの。補助具が収められている木箱の蓋裏には「天保十三壬寅初冬新調/後在家町/唯泉寺」の墨書が見られる。唯泉寺の本堂は天保14年に竣工しており、本堂の竣工にあわせて万が一の火災に備え、購入したものと考えられる。