大津市歴史博物館

展示・イベント

   

平成20年度


第45回企画展
楳亭・金谷 −近江蕪村と呼ばれた画家−
平成20年 3月6日(木)〜4月20日(日)

 江戸時代中期、松尾芭蕉への回帰を唱え、蕉風俳諧復興に尽力した与謝蕪村は、一方で、当時、新風をもたらしていた絵画スタイル、文人画の立役者としても著名です。そして大津では、呉春とならぶ蕪村の門弟であった紀楳亭(九老、1734〜1810)が、人々に請われて多数の作品を描いていたほか、蕪村に私淑した横井金谷(1761〜1832)が坂本に庵を結び、地元に多くの作品を残しました。それは彼らが非常にユニークな人物であったため評判を呼んだものと思われます。近江蕪村と呼ばれる彼らですが、蕪村風の作品以外に、彼らの個性あふれたユニークな作品が数多く残っている点も、単なる弟子や追随者にとどまらない彼らの活動を物語っています。そのためか、現代においてもなお評価は高く、海外でも愛好され、作品が収集される文人画家となっています。
 本展では、大津に愛された楳亭・金谷の作品の数々を、これまでにない250点あまりの規模で、地元に伝わる作品を中心に、国内外から発掘し、自由でとらわれのない文人精神を存分に発揮した彼らの画業を概観すると共にユニークな人物像も紹介します。
企画展「楳亭・金谷」の詳細

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第46回企画展(源氏物語千年紀in湖都大津 関連イベント)
石山寺と湖南の仏像−近江と南都を結ぶ仏の道−
平成20年 7月13日(日)〜8月24日(日)

 大津市の南郊を流れる瀬田川は、古来より都(飛鳥・奈良)と近江をつなぐ大動脈として認識されてきました。藤原京や平城京、東大寺などを建立するにあたり、田上、大石や信楽、高島など近江の材木をこの川により輸送したことは有名です。また、小浜や敦賀などに到着した日本海側の人や物そして仏教文化は、琵琶湖を経由して瀬田川もしくは宇治田原を通る「田原道(東山道か)」、そして奈良街道などにより、都へ運ばれていきました。そしてこれらのルートは、都の最新の仏教を近江にもたらす道でもありました。奈良時代には、岩間山や比良山系、金勝山、湖北の己高山など、近江の山岳仏教は、南都の僧により開発が進められ、各地で寺院が建立されました。そして何よりも、田上山や大石の開発と関連して、造東大寺司により石山院(石山寺)が創建され、また瀬田地域に国府や国分寺などが造られ、さらには保良宮や禾津頓宮などの宮が造られるなど、奈良の都の文化が直接この地に花開いたのです。このように石山寺を中心とした石山、瀬田、田上、大石、宇治田原町などの瀬田川流域、田原道沿道の湖南地域は、近江と大和(南都)を文化的につなぐ道として重要な役割を担っていたのであり、この地域は近江の仏教史を考えるうえで重要なキーワードを多く孕ませています。現在、その長い歴史のなかの栄枯盛衰ののち、往時の繁栄を示すものは多く失われてしまいましたが、それでもなお、地域の深い信仰により大事に守られてきた文化財、特に仏像が多く伝来しています。本展では、このように日本仏教の重要な地域の一つであるこの地域にスポットを当て、今は忘れ去られている近江と南都の親密な交流を、現存する仏像をとおして辿ろうとするものです。
企画展「石山寺と湖南の仏像」の詳細

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第47回企画展
かわら−瓦からみた大津史−
平成20年 10月11日(土)〜11月24日(月・休)

 大津の市街地も、全国の都市と同様、ビルが建ち並び、一般の民家でも瓦屋根の住宅が段々少なくなってきました。このままでは日本住宅から瓦が消えてしまう日が来るかもしれません。ましてや、葺きかえられた古い瓦は「瓦礫」となる運命です。しかし、それら「瓦礫の山」は、日本の歴史を物語る「宝の山」でもあるのです。
 さて日本に瓦が伝わったのは、今からおよそ1400年前の飛鳥時代。大津にも、その頃につくられた瓦が、穴太廃寺から出土しています。以来、大津も古代寺院の造営とともに、さまざまな意匠の瓦が製作されました。江戸時代初期には、松本村(大津市松本)が瓦の一大産地として登場。またこの時代、一人の瓦師が瓦界に革命を起こします。その名は西村半兵衛。発明された瓦は「桟瓦」。古くは、丸瓦と平瓦を組み合わせた「本瓦葺」が瓦屋根の主流でしたが、半兵衛による桟瓦の発明により、庶民の住宅に、軽量で安価な桟瓦が普及したのです。
 本展では、飛鳥・白鳳期から奈良・平安時代にかけて生み出された古代瓦を始め、江戸時代の松本村瓦師や西村半兵衛の銘を持つユニークな鬼瓦、猿や虎、猪などのかわいい動物瓦、さまざまな屋根の姿を描いた屏風や絵図面などを展示。皆さんを奧深い「瓦の世界」に御案内します。
企画展「かわら−瓦からみた大津史−」の詳細

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第48回企画展
道楽絵はがき−コレクターたちの粋すぎた世界−
平成21年3月6日(金)〜4月19日(日)

 大正・昭和のコレクターたちが作った「道楽絵はがき」の世界へようこそ。
今回ご紹介するのは、大正・昭和にかけて、絵はがきは勿論、郷土玩具・納札・絵馬など、様々なものを収集・研究するコレクターたちが、年賀状や宝船など、様々なテーマで交換したちょっと変わった絵はがきの数々です。この交換会には、当時の日本を代表するコレクター集団であった我楽他宗のメンバーの他、全国のコレクターたちが、こぞって参加しました。
当時のコレクターたちは、単に蒐集するだけでなく、コレクター同士の集まりではテーマに合った収集品を持ち寄ったり、自らが着想した趣味品を制作・頒布したりと、趣味の世界を存分に楽しんでいました。絵はがきにおいても同様です。自らの作品には、干支や自らの蒐集テーマから着想を得た見立てや素材に知恵を絞るとともに、そのこだわりは年々エスカレートし、専門の絵師や彫師、摺師といった職人に盛んに依頼するようになり、普通の絵はがきには見られない、美しくも面白い「道楽絵はがき」が作られました。
平成18年に当館に寄贈を受けた絵葉書コレクター米谷徳太郎氏の膨大なコレクションには、昭和初期を中心に、自らが参加した戦前の絵はがき交換会アルバムや、これらのノウハウが凝縮された曾我廼家五郎公演案内絵はがきなど、多くの作品が残されています。本展では、当時コレクターたちの趣向を凝らした「道楽絵はがき」の魅力を楽しんでいただくとともに、絵はがき交換会のシステムや参加者・コレクターの世界を紹介するなかで、当時のコレクターたちが作り出した、粋すぎた趣味の世界へご案内いたします。

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ミニ企画展

第66回ミニ企画展
葛川明王院文書−鎌倉時代後期の葛川−
平成20年 1月29日(火)〜3月9日(日)

  葛川坊村町にある、比叡山延暦寺の別院、明王院は、天台回峰行を創始した平安時代の僧、相応和尚によって開かれました。相応は若き日、修行の地を求めて比良山中に分け入り、明王谷三ノ瀧で生身の不動明王を感得したと伝えられ、以来この地は、回峰行の聖地として大切にされてきた場所です。現在も続く葛川参籠(夏安居:太鼓廻し)は、相応和尚の葛川での修行を再現しています。
 明王院が開かれると、この霊場を護るため住民が居住するようになり、生活のため、豊かな山林を開発し炭焼きなどの生業をはじめます。やがて人口が増加してくると、こうした開発は、広範に及ぶようになり、周辺の村々との対立を生むようになりました。霊場葛川を護るために居住する葛川住民が、生きるために山林を開発し、結果として生まれた周囲の村々との相論です。こうした相論にまつわる古文書や葛川参籠に関する古文書など、平安時代以来の膨大な資料が、葛川明王院には残されています。
 平成3年、平安時代から江戸時代にかけての古文書が「葛川明王院文書」として重要文化財に指定されましたが、その数は4,336通に及ぶ膨大なものです。この資料のうち、中世の古文書については、村山修一氏によって昭和38年『葛川明王院史料』として公刊され、中世、近江の山村で繰り広げられた住民たちの歴史を伝える貴重な資料として注目され、多くの研究が積み重ねられてきています。
 本展では、鎌倉時代後期、文保元年(1317)に起こった伊香立との相論を中心に、霊場であるがゆえに護らなければならなかった自然と、人々が生きるために開発することとのせめぎあいの中で、葛川の歴史が刻まれてきたことを、資料から紹介します。


第67回ミニ企画展
収蔵品蔵出し展
平成20年 4月15日(火)〜5月25日(日)

 当館では、購入、受贈、受託によって収蔵品の充実を行い、常設展示・企画展示に活用しています。今回は、近年新たに収集した絵画、歴史、彫刻、古文書、民俗の各資料をお披露目します。いずれも大津の歴史を知る貴重な資料です。


第68回ミニ企画展
広重の見た東海道
平成20年 5月27日(火)〜6月29日(日)

 歌川広重の保栄堂板「東海道五十三次」シリーズは、天保5年(1834)に55枚のセット売りが開始されました。このシリーズは、各宿場の風景や行きかう旅人の描写など、情感あふれる作品として知られ、他の街道シリーズの中でも群を抜いた名品で、空前の大ヒットを記録しました。
 今回は、東海道五十三次、全55枚を貼り交ぜた六曲一双屏風を中心に、人物東海道や五十三次名所図会など、他の広重作品を展示します。また、浮世絵に隠された面白い情報を紹介しますので、浮世絵をマニアックにお楽しみください。


第69回ミニ企画展
絵変わり大津絵の世界
平成20年 7月1日(火)〜8月10日(日)

 大津絵は、旅人相手にもっぱら売られていた街道の土産物でしたが、単なる土産物として扱う人々ばかりではありませんでした。早くも江戸時代の十八世紀前半から、大津絵に熱いまなざしを送る愛好家が次第に登場しはじめます。なかでも、同業者?の絵描きたちは、大津絵を無視できなかったようで、江戸時代には、画僧や職業絵師・文人画家たちが、そして近代には、日本画家や洋画家までもが、我流の大津絵を描いて作品としています。それらを見ると、自らの作風で描いて見せた作品、大津絵の図像を遊び心でアレンジした作品、大津絵の屈託のない雰囲気に迫ろうとした作品、忠実に大津絵に近づこうとした作品、に大別できます。ユーモラスにあふれた描きぶりで多くのファンを持つ大津絵。その屈託のない、自由奔放な筆遣いに惹かれ、自らのモノにしようとした画家たちが手がけた、さまざまな大津絵をお楽しみください。


第70回ミニ企画展
紫式部と近江八景・石山秋月
平成20年 9月23日(火)〜10月26日(日)

 紫式部は、源氏物語の執筆にあたり、石山寺本堂に七日間籠もって、構想を練ったと伝えられています。書き出すまで難産した式部を救ったのが、石山寺から眺めた中秋の名月でした。本展では源氏物語千年紀にあわせ、紫式部と縁の深い近江八景・石山秋月作品を紹介します。


第71回ミニ企画展 
今堅田の水車大工
平成20年 10月28日(火)〜12月7日(日)

 現在のように灌漑技術が発達していなかった時代、低いところにある水を、少し高い水田に移すことは簡単な作業ではありませんでした。発動ポンプの普及は20世紀にはいってから、それまでは人力で水を揚げるしか方法がなかったのです。その時活躍していたのが「踏車」と呼ばれる水車でした。回転部分を低位の水がある場所に漬け、羽根を人力で踏みながら車を回転させて水を高い場所に揚げる装置です。水田が干上がるのは、暑い夏場。炎天下に車を踏む作業は過酷なものでした。それでもバケツで水をくみ上げるよりは、よほど効率的だったことは確かです。こうした作業は、平地でも湖岸の水田でよく行われていました。今堅田には、こうした踏車を製作する水車大工がいました。踏車の構造は複雑で、その製作には高度な技術と独特の道具が必要でした。
今回は、こうした水車大工の道具を中心に紹介します。


第72回ミニ企画展
丑年の絵はがき
平成20年 12月9日(火)〜平成21年1月18日(日)

 3月から開催する企画展「道楽絵はがき−コレクターたちの粋すぎた世界−」を前に、その一部を展示します。当館所蔵の絵はがきコレクションの中から、丑年にちなんだ年賀状を中心に展示、交換会によって蒐集された、様々な図柄の数々をご覧いただきます。
 図柄に込められた工夫や見立ては、みなさんの年賀状作りにきっとヒントを与えてくれることでしょう。


第73回ミニ企画展
大津の遺跡シリーズ7 太鼓塚遺跡
平成21年 1月20日(火)〜3月15日(日)

 太鼓塚遺跡は、大津市滋賀里一丁目・高砂町にあります。現在までの発掘調査で、縄文時代.から平安時代までの様々な遺構や遺物が発見されています。縄文時代の遺構については現在のところ確認されていませんが、土器や石器が出土しています。また、弥生時代の溝跡からは多くの土器が出土し、中には完全な形のものもありました。
 古墳時代中頃の遺構には、竪穴住居跡があり、壁ぎわの穴から土器がまとまって出土しました。古墳時代後期になると、古墳が密集する古墳群(太鼓塚古墳群)が築かれました。発掘調査の結果、現在約60基の古墳が明らかになっています。  古墳群は標高110〜150mに位置し、南北200m、東西450mの範囲に広がり、六世紀中頃から七世紀中頃までの約100年間に200基近くの古墳が造られたと推定されています。古墳の墳丘の形はほとんどが円墳で、大きなものは20m前後、小さいものは1m以下のものもあります。大半が巨石を積み上げた横穴式石室ですが、小石室や土器を棺にしたものもあります。
 太鼓塚古墳群をはじめ、大津市坂本から錦織にかけての地域に所在する古墳群の古墳には、他の地域の古墳と異なる特徴があります。まず、横穴式石室の形態が異なります。一般的な横穴式石室の壁面が垂直に近く積み上げられるのに対して、この地域の横穴式石室の玄室は、四壁を徐々に内側に持ち送って積み上げてドーム状にしています。また、玄室の平面形が長方形だけでなく、正方形や横長の長方形のものが見られることもこの地域の古墳群の特徴です。さらに、石室内に納める副葬品にミニチュアの炊飯具セット(カマド・カマ・コシキ・ナベ)が認められます。これらの特徴からこの地域の古墳群は、中国や朝鮮半島と関係の深い渡来人たちの墓と考えられています。
 また、奈良時代や平安時代の遺構として建物跡も発見されています。
 今回のミニ企画では、太鼓塚遺跡出土のいろいろな時代の様々な資料を通して、大津の歴史の一端を紹介します。


第74回ミニ企画展
大津の仏教文化9 三井寺護法堂神堂の土人形・伏見人形
平成21年 3月17日(火)〜4月19日(日)

 「千団子さん」で有名な三井寺(園城寺)の護法善神堂に伝来する、江戸から昭和時代にかけて造られた土人形、伏見人形を展示し、三井寺の信仰と土人形の美を紹介します。